レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

Vシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』感想+考察

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 ここは『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』の感想記事…を纏めた記事です。と言う訳で、『アナザー・エンディング』の三部作(『ブレイブ&スナイプ』、『パラドクスwithポッピー』、『ゲンムVSレーザー』)の感想記事をこの記事に溜めていこうと思います。また、「コンプリートBOX」が発売されるタイミング(4月11日)に『アナザー・エンディング』の総合感想をこの記事の下に書こうと思うのでそちらも宜しければ。(総合感想の追記は「4月末」に変更になりました。ご了承ください)それじゃあ、これから約3ヶ月、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!

▼2018.02.03.『ブレイブ&スナイプ』

 『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーブレイブ&スナイプ』の感想記事を投稿しました。

▼2018.02.17.『パラドクスwithポッピー』

 『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーパラドクスwithポッピー』の感想記事を投稿しました。

▼2018.03.03.『ゲンムVSレーザー』

 『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVSレーザー』の感想記事を投稿しました。

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 さて、ここから先は『アナザー・エンディング』の総合感想になります。別に繋がってる訳じゃないけど、予め三部作其々の感想に目を通してから下に進んで下さいね。それではどうぞ。

▼檀黎斗と言う存在

 ──三部作のストーリーがつながっていて、黒幕が檀黎斗であるという部分については?

高橋 大森さんの最初の企画書の段階から「黎斗の脱獄」というのがありましたよね。Vシネマでいきなり、また新しい敵が出てきても、観る側としても「誰だよ」という感じになるだろうし、そもそも「諸悪の根源」のはずの黎斗が生き残っているというのが、作っている我々としても……(笑)

大森 そうですね。「なんであいつは生き残っているんだ」という話はずっと出ていたんです。あれだけ悪いことをしていたわけですからね。やっぱり黎斗は消えなくちゃいけないだろうと。

仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』コンプリートBOX ライナーノートより。

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 『アナザー・エンディング』は極論を言うならば「檀黎斗を消す為の物語」である。檀黎斗と言う存在は『エグゼイド』の世界にあってはならないもの。製作陣はそう言う解釈でこの三部作を作った。仮面ライダーレーザー/九条貴利矢に「ドクター」の肩書きを捨てさせても尚。

 黎斗との決着は、そもそも永夢達ドクターにはつけられないものでした。本編で黎斗が暴れた時も、永夢が「罪をつぐなってください」「ドクターだから命は奪えない」と言ったように、白衣を着ている人たちにさせたくなかった。貴利矢もドクターではありますが、監察医は人の命を救う職業ではなく、遺体を調べる職業であって、永夢たちとは別軸のドクター。立場的な意味でも貴利矢は黎斗の相手として適任で、バグスターになって一度は人間としての命を失っていることもあったので、やはり彼にしかできないんです。最終決戦の前には自らの意思で白衣を脱ぎ、永夢に預けた瞬間から、ドクターという肩書きも完全に捨てて。

▲『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVSレーザー オフィシャルムック ~SELECT▶LIFE~』より、高橋悠也のインタビュー。

 ここでは「果たしてその解釈は正しかったか否か」について書いていく。

▼檀黎斗は消滅して良かったのか?

 「檀黎斗は消滅して良かったのか?」その答えは誰に問い掛けるかによって変わってくる。先ずは「『エグゼイド』の世界の人間達」にこの問い掛けをしてみる。上記の通り、この世の中には檀黎斗と言う存在は「あってはならないもの」である。貴利矢も言っていたが、檀黎斗がいる限り、人類の脅威は無くならない。となると、その世界の人間達にとっては、問い掛けの答えは"YES"となる。

 では次に、この問い掛けを『エグゼイド』の主人公、宝条永夢にしてみよう。
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パラド「人間は一度死んだらそれまで。そんなもん救うなんて、無理ゲーにも程があるだろ。(中略)お前の大好きなゲームなら、死んだってコンティニュー出来る。白衣なんて捨てて、気軽にゲームを楽しめよ。」

永夢「ふざけんな!お前達のゲームのせいで、貴利矢さんは死んだんだ!」

パラド「落ち着けよ。アイツを殺ったのはゲンムだ。(中略)ドクターでいる限り、人間の死は避けて通れない。お前に耐えられるのか?」

永夢「耐えられる訳ない。誰かが死ぬのなんて。誰も死なせたくない。

パラド「人間の命すらも、ノーコンティニューで救うって訳か。」

▲『仮面ライダーエグゼイド』13話「定められたDestiny」より。

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大我「何がドクターだ!アイツをぶっ潰すチャンスだったんだぞ!」

飛彩「俺達ドクターの仕事は、人の命を奪う事じゃない。」

ニコ「はぁ?アイツをぶっ倒さなきゃまた誰かが犠牲になるの分かんないの?」

大我「あの男の命か、大勢の命か、お前はどっちを取るんだ?」

永夢「命に優先順位なんてつけられない。

▲『仮面ライダーエグゼイド』23話「極限のdead or alive!」より。

 命に優先順位なんてつけられない永夢なら間違いなく黎斗を殺める事は出来ない。貴利矢は「ドクターであるお前にあいつの命は奪えない」と言っていたけれど、ドクターだろうとなかろうと、永夢なら黎斗を倒す事は出来なかっただろう。消えようとする黎斗を見て泣いていたもんね。と言う事は、永夢のアンサーは"NO"と言うことになるね。

 次は同じ問い掛けを視聴者にしてみる。言わずもがな、檀黎斗は『エグゼイド』ファンからの人気は高い。「死なないで欲しかった」と言うファンも多かっただろう。でも、中には「ちゃんと消滅するべき」と言うファンもいるだろうね。視聴者の死生感の違いが、両派に別れる原因だ(黎斗がやってきた事も理由としてはあるが)。そうなると、視聴者達の答えは"DRAW"(引き分け)と言う事になる。

 さて、こういった結果が出た中で、檀黎斗は消滅し、「死なないで欲しかった」派の視聴者と永夢にとっては望まない結末を迎えてしまった。…かに思えたが…?

黎斗「私のゲームに、終わりはない。」

▲『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVSレーザー』より。

 まさかまさか、最後の最後に黎斗は「まだ死んでいないかも知れない」と言う事を視聴者に示唆させたのだ。

 皆さんは『ゲンムVSレーザー』をご覧になるまでは、黎斗と貴利矢の両方が消滅するのか、もしくは一方が消滅するのかと予想されるでしょうが、結果はだいぶ違ったものになっていると思います。ただ本当のラストシーンは、悲壮感がただようものにはしたくありませんでした。未来への希望のある終わり方というか、「あなたたちはやはり喧々諤々やっていくのね」という余韻を残す終わり方にしたかったんです。まさに医療に終わりがないように。

▲『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVSレーザー オフィシャルムック ~SELECT▶LIFE~』より、高橋悠也のインタビュー。

 ここで、『エグゼイド』チーフP、大森敬仁のスタンスを振り返ってみる。

――お2人を「仮面ライダー」の世界に引き入れたキーマンといえば、東映の大森敬仁プロデューサーですが、大森さんとご一緒にお仕事をされた印象はいかがですか。

高橋:頭の回転がすごく早い方だと思いましたね。とても仕事がやりやすい一方で、せっかく書いてきた原稿を容赦なくバッサリいかれるときもありました(笑)。それは、『エグゼイド』の物語をより面白くするための「かじ取り」なんですけれどね。常に作品の全体像や、ここから先のことが見えている人なんだと思っています。

武藤:出会ったときの印象は、忙しい人だなあと。それは『エグゼイド』を作りつつ、同時に『ビルド』の企画を立ち上げていたからだったんですけれど。一緒にやってみて思ったのは、非常にクレバーというか、高橋さんがおっしゃったように物事を常に俯瞰で見ることのできる方だということです。シナリオを書く側としては、世界観に没入していく、物語に入り込んでいく部分があるのですが、大森さんは常に「視聴者の視点」でどう見えるかを突き詰めてくるんです。ただ、意外と脚本家の「やりたいこと」を壊すことなく、ホン(脚本)を読んで「こいつはこういうことをやりたいんだな」と理解し、やるためには「こうしたらいいんじゃないか」と、プラスの考え方で変えていくことが多いですね。

『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』ビルド武藤将吾&エグゼイド高橋悠也の脚本家対談 - 夏映画ビルドの伏線、ライダーを書く魅力に迫る (3) 休日の朝とは思えない展開の速さ、情報量の多さ | マイナビニュースより。

 『エグゼイド』は「視聴者の見たいものをやってくれている」とは下の記事に書いた事がある。

 『エグゼイド』世界の人類にとっては檀黎斗が消えて嬉しいが、彼の死がゲーム病によるものである以上、再生医療による復元の可能性も十分にある為、永夢にも希望がある。また、視聴者にとっても檀黎斗が(一旦)消滅した事に喜ぶ者もいれば、まだ生きているかも知れない事実に喜ぶ視聴者もいる。

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 「檀黎斗は生きているのか死んでいるのか分からない」と言うラストは、『エグゼイド』にとってこれ以上ないベストな結末だったのかも知れない。

 …え?黎斗が生きている可能性があるなら『エグゼイド』世界の人々はまた怯えるんじゃないかって?ラストシーンで黎斗は貴利矢の前にしか現れてないし、多分皆は黎斗は消えたと思ってると思う…。…え?黎斗が生きている可能性があるなら「檀黎斗は死ぬべきだ!」と言う視聴者が報われないって?…小説を待て!!(ェ)
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 こうなると、小説でも黎斗は復活するべきじゃない気がする(過去が語られるのは良いけど)。

岩永 僕は黎斗の最期については、次のステップに行くために「ライフ」という概念を越えたいという想いもあったんじゃないかなと感じているんですよ。だから消滅して終わって、その後の余白が残っているという今の結末は、とてもよかったな、と。そんな捉え方をしています。高橋 なるほど。その捉え方は、まあ、当たらずも遠からずと言うか……実は今ちょうど『エグゼイド』の小説を書いていまして。

岩永 ええっ!?知らなかったぁ……!(この対談は、小説『仮面ライダーエグゼイド ~マイティノベルX~』の情報が発表される前に収録されました)

高橋 そこで黎斗の「次のステップ」についても書いています。トリロジーで行くところまで行って消滅した彼の存在がその後の未来にどんな影響を与えているか、というところですかね。

岩永 うわぁ、読むのが楽しみです!

▲『仮面ライダーゲンム 檀黎斗列伝』より、岩永徹也高橋悠也の対談。

 この言い方だと黎斗が小説で生き返るのかそうでないのか、よく分からないな…!まぁ、岩永さん風に言うと、「読むのが楽しみです!」。と、言う訳で、以上、『アナザー・エンディング』の総合感想でございました。
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ではこれにて。