レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

我々は仮面ライダーセンチュリーの誕生を祝えるか

f:id:kro12218116h:20210223154701j:image

 こんにちは。レイジング野郎です。タイトルじゃ解りにくいかも知れないけど、今月の記事は、東映特撮ファンクラブとTERASA(テラサ)にて配信された、『RIDER TIME 仮面ライダーディケイドVSジオウ ディケイド館のデスゲーム』と『RIDER TIME 仮面ライダージオウVSディケイド 7人のジオウ!』の感想とその考察記事です。以降、二作品合わせて『ジオディケ』と書かせて戴きます。…先に言わせて戴くと、「取り敢えず早く投稿しよう!」と云う使命感からか、殴り書きのやつを殆ど編集せずお出ししてしまったと言うか…、今回の記事はいつにも増して構成がぐっちゃぐちゃだと思います…!もしかしたら後で修正入れるかも知れないし、そのままにしとくかも知んないw(えぇ~!?)まぁ、言いたい事はおおよそ伝わるとは思うのでご勘弁…!と云う訳で、『ジオディケ』、評価は散々ですね~!!只、自分はこの『ジオディケ』にあるメッセージを感じまして。今回はそれについて書いていこうかと。キーワードは「平成からの脱却」です。それではどうぞ。

▼魔王、オーマジオウ、破壊者、ディケイド

白倉 『ジオウ』に課された一番大事な役目は、平成ライダーのお墓を立てることなんですよね。オーマジオウって墓守じゃないですか。あのズラッと並んだ平成ライダーの石像は彼らのお墓なんですよ。で、それが暴れださないよう、50年間の見張りについてるわけです。ちゃんときちんとしたピリオドを打って、平成ライダーを封印することができたんじゃないですかね。まぁ、別に封印することもないんだけど(笑)、過去のものにすることができた。

▲『仮面ライダージオウ公式完全読本』より、白倉伸一郎のインタビュー。

f:id:kro12218116h:20210223155355j:image

 オーマジオウ。全ての平成ライダーの歴史を奪い、その力を手にしている彼は言わば、平成の墓守であると同時に、平成の封印者とも云える存在である。平成ライダーの歴史を収束し、石像を立てる事で、平成ライダーと云う存在を緘する筈だった。しかし、一筋縄ではいかない存在(作品)が一つあった。それが『ディケイド』である。
f:id:kro12218116h:20210223155405j:image

 仮面ライダーディケイド/門矢士。本来、9つ(クウガ~キバ)の世界を通りすがる事で旅を終える筈だった彼は、『BLACK』や『アマゾン』と云った昭和ライダーの世界、スーパー戦隊である『シンケンジャー』の世界、更には『W』以降の平成二期ライダーの世界迄をも通りすがり、それらの世界の力を手に入れては、最後に平成最後の作品たる『ジオウ』の世界に迄、足を運ぶ事となる。幾つもの世界を巡り、その世界を破壊してきた彼は、平成ライダーが暴れるのを止める役割を担う『ジオウ』にとって、正に邪魔者であった。

──(中略)最終的にラストまで活躍することになった門矢士ですが、当初からこんなに登場する予定だったんですか?

白倉 結局、全体クランクアップの日までいたんじゃないかな(笑)。『電王』と『ディケイド』って、『ジオウ』という企画にとっては難物なんですよね。いろいろと要素が被っているし、相当気をつけて扱わなきゃいけない。ディケイドに関しても、最初からああいう形を想定したいたわけではなかったけどある種の特別扱いは必要で、通りすがりのゲストじゃ済まないだろうなとは考えていました。シリーズの設定的な根幹の片棒をどこかで担いでもらわなきゃいけないなと。有り体にいえば「敵だね」と思ってたんですよ。ちょうどいいからラスボスとまではいわないけど、中ボスになっていただいて3月くらいに倒すか!みたいな(笑)。もしくは倒したらグランドジオウになれるとかね。

▲『仮面ライダージオウ公式完全読本』より、白倉伸一郎のインタビュー。

 「門矢士は『ジオウ』本編内で倒される」と云う案があったのか…!「ディケイドは殺す事でしか止められない」と云うのが製作サイドの判断だったのだろう。事実、ジオウは平成ライダーの歴史を奪ってきた筈なのに、ディケイドのそれだけは最後まで完全に奪われる事は無かった。ディケイドの力を失くしても尚「俺の力ってのは、俺の存在そのもの」なので、オーロラは操れると云うチートっぷりである。じゃあどうすれば門矢士の旅を終わらせられるのか?そう、排除するしかないのだ

▼ディケイドを"殺す"と云う事

当時東映にいて、『仮面ライダークウガ』を手がけた高寺(成紀)も、そのあとを引き継ぐ形になった私も、昔の、今でいう「昭和ライダー」を見てきている世代なんですよね。それは当時のお客さんのパパたちもそうだった。作り手側も受け手側も、暗黙の了解として、「昭和ライダー」に対するカウンターだとか、ここはリスペクトなんだということを共通認識としてもっていた。そこを踏み台にして、「平成ライダー」というものが初期に立ち上がってきたという経緯がありました。

ただ、それは当然のことながら、長続きするわけでもありません。時代はめぐり、今の視聴者というのは「昭和ライダー」なんかも知らないし、逆に「平成ライダー」の初期に対してどうなんだという方向に、作り手側も視聴者側も意識が切り替わっている。でもそれを繰り返していくと、やっぱり「平成ライダー」というものの中だけで閉じこもってしまう感じがするんですよね。

作り手も含めて我々って、当たり前なんですけれど、「平成ライダー」だけで生きているわけではけっしてないじゃないですか。それはもうどこかで時代というものから隔絶していってしまう。「平成ライダー」が世の中のすべてみたいなものの見方になってしまう。今やっている『ジオウ』なんかは、ある種まさにそうですよね。「平成ライダー」の歴史だけでものを語っているところがある。

(時期について)幸いにしてというわけではないですが、平成が終わり、元号が切り替わるという中で、そこを断ち切っていかなければならないところにきているなというふうに思っています。「昭和ライダー」へのカウンターとして「平成ライダー」というものが立ち上がり、いつしかカウンターでもなんでもなくなって、平成ライダー」の中に閉じこもりかけているものを、ここでまた一回、ゼロにはできないんでしょうけど、どこかで断ち切って次のステップにいかないといけない。

新しい時代の「仮面ライダー」を、しがらみのない視聴者目線で - 特撮プロデューサー募集の意図を東映・白倉伸一郎Pに直撃 (4) | マイナビニュースより、白倉伸一郎のインタビュー

 仮面ライダーディケイド コンプリートフォーム21がそれと云った活躍を出来ないままオーマジオウに敗北したのは「所詮は平成の歴史の一部」であると同時に「ディケイドと云う存在自体の陳腐」もあるのだろう。(要出展なのだけど、「ディケイドはオーマジオウにはカメンライド(フォームライド?)出来ない」、と云う設定があるらしい。ディケイドは結局、歴史を収斂する存在には成り得ない、と云う事なのかな。)まぁ、大人の事情的な事を言えば配信枠であるが故の予算の都合もあるのかもだけど。昭和ライダーが長続き出来ない様に、ディケイド(乃至は平成ライダー)と云う存在も、決して長続き出来る逸材ではないのだ。ディエンド、クウガ、キバーラが増援に駆け付けたところで、それらの歴史をも収斂しているオーマジオウには勝てっこない。ジオウ、ディケイドと、平成ライダーの力を自由に使えるライダーが揃っていながら他の平成ライダーの要素を微塵も出さなかったのは、平成ライダーと云うブランドそのものが最早過去の物であり、振り返ってはならない存在であるからだろう。我々は未来に進んで行かなければならないのである。まぁ後は、仮にコンプリートフォーム21が歴代ライダーの能力を使って戦ったところで、どうせ負ける事が確定しているのであれば、無理に使ってそのライダーのファンをガッカリさせちゃうのもアレだよね、とも考えたのかな。ちょっとヤな言い方だけど、憎まれ役が出来るのもディケイドだけ、と云うか。ここで活躍するのが仮面ライダージオウ ディケイドアーマーセイバーフォームである。f:id:kro12218116h:20210223155155j:image

 ディケイド コンプリートフォーム21は平成の集合体であったものの、それではオーマジオウには勝てなかった。「令和のゼロワン(ゼロツー)の力も持ってるけど?」ともなりそうだが、『ゼロワン』もまた『ジオウOQ』で先行登場したり、『令和・ザ・ファーストジェネレーション』でジオウと共演をする等、平成の歴史にも擦ってしまっている。平成の歴史に全く干渉していないライダーは現行のライダーである『セイバー』だけなのである。と同時に、『セイバー』は今この瞬間瞬間を必死に生き、現在進行形で歴史を紡いでいる作品である。瞬間瞬間を必死に生きる…?何処かで聴いたことがあるような…!

ソウゴ「これだけは分かるよ。未来は誰にも分からない。瞬間瞬間、生きていくしかないんだ。」

▲『劇場版仮面ライダージオウ Over quartzer』より。

f:id:kro12218116h:20210223155138j:image

 あぁっ!これって『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』の台詞じゃん!そう、恐らく門矢士が息絶えたのに対し、常磐ソウゴが生き残った理由はそこにある。ソウゴは自分の未来を自分で切り開く選択をした人間なのだ。だからこそディケイドには使えなかったセイバーのウォッチを使えたし、オーマジオウを倒す事が出来た。思い返すと、『ジオウ』本編最終回も、『ジオウOQ』も、『ゲイツ、マジェスティ』も、今回の『ジオディケ』も、「未来は自分達で切り開いていく」と云う結論で物語を締めているのよね。ディケイドとオーマジオウの死は平成の終わりを意味すると同時に、令和と云う新しい時代に、ソウゴ達だけでなく、我々ライダーファンも進んでいく為の儀式でもあった訳だ。

▼オーマジオウ=老害ライダーファン

 しかし、だからこそディケイドを生かしておく訳にはいかなかった。このままディケイドを野放しにしておけば、いつかは令和の時代にまで干渉しかねないからだ。ディケイドは平成に留まらず、様々な世界(乃至は時代)に通りすがってきた破壊者。だが、平成の産物である彼を令和にまで割り込ませる訳にはいかない。言い方は悪いけど、多分「いつまでも平成を引き摺ってんじゃねぇ!!良い加減令和になりやがれ!!」と云うメッセージがあったようにも感じる。

──本作で平成ライダーの総決算が描かれたあと、令和になっても仮面ライダーシリーズは続いていくと思いますが。

白倉 それについては、夏映画のテーマとして、「老害」という考え方もあり得たと思うんですよね。

──えっ、老害……ですか?

白倉 平成ライダーがいつまでも時代に居座り、令和の新ライダーにその座を譲らない。それをジオウが頑張ってバトンを渡す……みたいな。

──権力の座にしがみつくという捉え方だと、王様論に通じますね。

白倉 そうですね。ソウゴがジオウとして最高最善の王になったとする。でも50年間、ずっと次世代へ権力を移譲しなかったら?最初は良いライダーだと思えても、それが変わらず半世紀も経ったら嫌気もさすでしょう。いきつくのは結局、最低最悪の魔王、オーマジオウですよ。

▲『仮面ライダー公式アーカイブ FIGHTING TIME ジオウ×ゲイツ』より、白倉伸一郎のインタビュー。

 や、平成ライダーファンを「老害」と言うつもりはないんだけど、『平ジェネFOREVER』、『ジオウOQ』と、平成ライダーの幕閉じが良くも悪くも心に残ってしまい、それを忘れられないファンが思いの外多すぎた。「平成33年だぁーーっ!!!」とかでっかく煽っておきながら実際に観せられたものがこれだったのも、「ソウゴ達は未来に進もうとしているのに、ぽめぇらはいつまで平成に縋り付くつもりだ?」と云う一種の皮肉もあったのかな、と。平成の真の幕閉じを「ちゃんと作らない」事で旧態依然なファンを令和に進める様に促した、と。まぁ、やり方はどうかとは思うけどね。これ以降のライダーの歴史に、ディケイドとジオウはもう要らないのだ。ソウゴの「オーマジオウにはならない」と云う決意は、「令和の新ライダー軍にバトンを渡す」と云う委譲の意思表明とイコールなのだ。

 とは言え、平成と云う歴史、平成ライダーが戦ってきた時代が我々を形作り、人生の糧となった事に変わりはない。製作サイドの意識としてもそうだろう。平成と云う激動の時代があったからこそ、平成ライダーは止まることなく続き、『ゼロワン』から始まった令和ライダーと云う新たな歴史に足を踏み入れる事が出来た。平成があったからこその令和なのだ。ここで『平成ジェネレーションズFOREVER』の理屈である。
f:id:kro12218116h:20210226194900j:image

U良太郎「仮面ライダー電王。まぁ、愛と正義のタイムパトロールってとこ?あ、忘れちゃった?…言ってたよね?ライダーなんかいないって。確かに、僕達の存在は嘘かも知れないよねぇ。でも、誰かが覚えていてくれれば、そこに僕達はいる。記憶と云う時間の中で、僕達の存在は本当なんだ。」 

▲『平成仮面ライダー20作品記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』より。

ジオウが誇るレギュラーキャスト一同、ご出演いただいたゲストの方々。おかえりなさいのベテランスタッフ陳、はじめましての若手勢……。

そして何より、1年間ご視聴いただいた皆さま。

ジオウを、平成ライダーを忘れないでください。

でも、最終回を迎えたこの瞬間。ジオウも平成ライダーも、過去になりました。

ここから先は、未来です。未来は、私たちそれぞれが、つくっていくもの。

いま、私たちはみんな、同じスタートラインに立っています。

 

 

「いつか未来で!」(by 電王)

 

(そして来週、『ゼロワン』で!)

 

仮面ライダージオウ 最終回を終えて | 仮面ライダーWEB【公式】|東映より、白倉伸一郎の文責。

f:id:kro12218116h:20210226195000j:image

 我々は平成の歴史を忘れてはならない。だが、平成と云う時代からは脱却しなければならない。令和と云う未来へ進んでいかなければならないのだ。

 『ジオディケ』にはそう言うメッセージがあったのかな、と自分は解釈して、今回の記事は終了としようと思います。ありがとう、門矢士。ありがとう、仮面ライダーディケイド。どうか安らかに。f:id:kro12218116h:20210226195141j:image

 まぁ、そんな事を言いつつ、何食わぬ顔でしれっと復活しそうな気もするけどね、門矢士はw

▼最後にもう一つだけ

──『ディケイド』の製作発表会のときに、白倉さんは「ディケイドって言葉は十年期って意味ですが、百周年、仮面ライダーセンチュリーを目指します」と宣言されてましたよね。あれは感動しました。

白倉 そうですか(笑)。あれは半分以上ウケを狙って……。

──いやいや、ガチだと思いました(笑)。ぜひとも、そうなるように今後とも期待してます!

白倉 ここで終わりとか、言えないですよね。

▲『永遠の仮面ライダーシリーズ 語ろう!555・剣・響鬼』より、白倉伸一郎のインタビュー。

 やっぱり、自分はライダーファンなので、これからも"毎週"『仮面ライダー』シリーズを観ていきたいし、今や当たり前の様になっている毎週放送の経路が途切れてしまうのは嫌だ。まぁ、別のインタビューでは白倉伸一郎はこんな事も言っていたけれど、やはり自分は『仮面ライダー』を毎週観たい。それは譲りたくない。

白倉 僕は、平成ライダーの次は元号が付かないでほしいと思っています。そもそも平成ライダーって、昭和ライダーに対するカウンターとしての呼称なので。これだけ作品が続いてくると、結局すべて枠の中でものを語ってしまうんです。語れることは素晴らしいんだけれども、結局「前の番組と比較して、ここは同じでここが違う」とか、ライダーの内側ばかり見て会話してしまう。そうではなく、きちんと今の時代や子供たちに即したヒーローであってほしい。つまり、“昭和”とか“平成”でくくられている仮面ライダーという歴史自体から解放されないといけないんです。だって、“平成スーパー戦隊”とか“昭和スーパー戦隊”っていう呼び方はないわけですから。

武部 そうですね。「平成ライダー」という名前を付けなければ、平成ライダーが終わることもなかったのに。

白倉 名乗ったから終わる。だから“元号ライダー”はもう終わってほしいんですよね。まあどうせ東映さんのことだから、新しい元号が発表されたら“◯◯ライダー”と呼ぶんですよ。

武部 昭和 VS 平成 VS ◯◯!みたいな。

白倉 たぶんやるし、自分がやるかもしれない(笑)。でも精神的な部分では、そういうつもりじゃいかんな、と思います。新番組でも「◯◯シリーズ第1弾!」と銘打つと、第2弾や第3弾でもとを取ればいいやと思って甘えてしまいますからね。つまり元号に頼らず、仮面ライダーシリーズなんて終わってもいいくらいの気持ちでやってほしいですね。そのあとまた、11年くらいブランクを空けて始めればいいじゃないですか(笑)。

「平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER」仮面ライダージオウ座談会 / 仮面ライダービルド座談会 / レジェンドプロデューサー座談会 (6/6) - 映画ナタリー 特集・インタビューより。

 『仮面ライダー』シリーズは今年で50周年。100周年まで折り返しの地点である。今から50年後、我々がオーマジオウにならず、『仮面ライダーセンチュリー』の誕生を祝える様、過去に縋る事無く、未来は自分達の手で切り拓いていこう。

▼2021.06.22. 追記

──『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』は、そんなソウゴとゲイツの集大成という面もあるかと思います。製作発表記者会見では、白倉さんから「本当の最終回」という言葉が出ていました。

白倉 "平成仮面ライダー20作記念作品としての『仮面ライダージオウ』の最終回"が、夏映画なんです。この番組はなぜ生まれ、常磐ソウゴという主人公がなぜ設定されているのか……そういう根本に答えを出す作品。あとは、「すでに令和の時代へ移ったのに、いつまで平成ライダーとか言ってるんだ!?」という感覚そのものを映画化する目的もありますね(笑)。

▲『仮面ライダー公式アーカイブ FIGHTING TIME ジオウ×ゲイツ』より、白倉伸一郎のインタビュー。

f:id:kro12218116h:20210622230037j:image

 何が言いたいのかと言うと、「"平成"を壊す」演出をした映画が原因でライダーファンが"平成"を擦るようになってしまったと云うのは何とも皮肉だな、と言う事です。

 

 

ではこれにて。