レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

『セイバー』の「希望」と『ゼンカイジャー』の「絶望」

kro12218116h.hatenablog.com

 こんにちは。レイジング野郎です。早速ですが、今回の記事を読む前に先ずは上に添付した記事を読んで戴きたく。この記事の続き…ではないんだけど、密接に繋がっているモノとなっているので、まだ読んだ事の無い方は先に此方をご一読下さい。では、上の記事を読み終えた貴方は、ようこそ、今月の記事へ。…ッ?!何が起きてッ…ぐ、がああぁぁ……!!

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─────▼2021.03.22▼─────

▼ライダーは助け合いでしょ?

 以前、自分は上の記事で「ソードオブロゴスは助け合いを描く為の設定」という事を書いた。

──『仮面ライダーゴースト』では、若者がヒーローとして成長していく姿が描かれていましたが、それに対して今回の飛羽真(とうま)は?

福田 今回の主人公は文豪で剣豪。とはいえ一人では戦えないので、いろんなライダーと仲間になって一緒に戦っていく。つまり仲間の話だと思ってるんです。仲間を集めていくという過程でも、自分で責任をもって何かができる立場にある人間のほうがいいだろうということで年齢を少し上にしました。もちろん、仲間と絆を深めていく中で彼が成長していくという面はありますが、今回は『ゴースト』の時と比べると、成長物語としての要素は強くはないと思います。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME62』より、福田卓郎のインタビュー

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 概ね間違ってはなさそう。製作発表では「性格も戦う理由も其々異なっており、彼らが交わる事で深い人間ドラマが織り成されます」と番組概要が語られた通り、最初こそ共闘していたソードオブロゴスのライダー達は現在は其々に苦悩し、飛羽真への信用についても少しずつ進展していっている。今後は倫太郎と蓮の動きに注目だね。「人間ドラマ」という通り、仮面ライダーは当然「人間(ホモサピエンス)」であり、其で在るが故の疾苦が描かれているものの、恐らくいつか彼等が解り合える時が来るのだろう。
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 そんな中、30分後に放送されていた『魔進戦隊キラメイジャー』が華々しい最終回を迎え、次週からは新番組『機界戦隊ゼンカイジャー』がスタートした。チーフPはスーパー戦隊シリーズは初となる白倉伸一郎マ、マジぃ!?45作記念のアニバーサリー作品となる『ゼンカイジャー』を製作するにあたって、白倉伸一郎はこう語る。

──では、どういった思惑で今回の企画が作られていったんでしょうか?

白倉 趣旨としては、アニバーサリーとして「スーパー戦隊の本質」というのをどう掘れるかなってとこなんですよね。「5人1チームである意味」です。そこには2通りの解釈があって、「5人合わせて一人前」という解釈と、「1人1人がヒーローで5人集まれば更に5倍の力」という解釈。私はどちらかというと、「1人1人だとそれぞれ欠けているところがあり、それを補い合ってチームを組むから強いんだ」というほうがいいのかな、という気はしていて。これだけシリーズが年月を重ねてくると、キレンジャーみたいな「カレー食ってる人」というのがいなくなっちゃうんですよ。男女ともに美男美女で、みんな優れていて、1人1人が正しい心を持ち、身体も頑強で、というふうになってしまう。すると、5人集まる意味って何? というところに戻ってきてしまう。だからこそそれを崩して、「それぞれ欠陥もあるかもしれないけど、力を合わせれば素晴らしいチームになるよ」と。それこそ多様性のあるチームというんですかね。

 成程。先程添付した記事にも『週プレ』に掲載されていた切通理作の評論を引用しているが、吉川進の思い描くスーパー戦隊の真髄に忠実な作り方をしていると言えるね(因みに、「5人1チームである意味」を後者の解釈で作られたのが前作の『キラメイジャー』と言える)。「一人では戦えないから仲間を集めて一緒に戦う」と云う部分では『セイバー』とも共通している。筈なのだが…、

それは、今や人間じゃ作れなくなってるんじゃないの? と感じたので、だったらメンバーをスーツのキャラクターにしちゃおうという発想です。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME63』より、白倉伸一郎のインタビュー

 おおぉ…!そう来ますか…!

 此迄のスーパー戦隊シリーズでも、異種間コミュニケーションと言うか、「異なる種族同士でも解り合える」と云うメッセージを描いてきた作品は多い。人外キャラクターが変身する事象も珍しくなくなってきたからね。白倉伸一郎はここから一歩前進し、「もう人間同士で助け合うのは無理」と断言してしまった。恐らく、このコロナ禍を受けての白倉伸一郎なりの結論なのだろうが。

 とは言え、この結論は余りにも希望が無いよね。本当だったら、人々が助け合って危機を乗り越えていくのが理想の筈なのに。まぁ、自分もこの前の記事で『鎧武』を引き合いに「人々が助け合うのは不可能」って書いちゃってるのであんまり言えないけど。

 『セイバー』は希望を描いているが、それはあくまで理想論でしかない。

 『ゼンカイジャー』は現実を描いているが、それは同時に絶望をも意味する。
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 『セイバー』と『ゼンカイジャー』、どちらが「本物」を描けるか?

 今後は其処に注目しながら、今期のスーパーヒーロータイムを刮目していこうと思います。

─────▲2021.03.22▲─────


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─────▼2021.04.26▼─────

 …ハッ!?今のは一体…。まさか、タイムスリップ!?!?…と、言うのは冗談で、実はこの記事、先月から書き始めていたモノでして、その頃のスーパーヒーロータイムの状況を汲んで書いているので、約1ヶ月のタイムラグがあるのです…!現在は、『セイバー』では組織の真の敵がマスターロゴスと判明し、サウザンベースに就いていたライダー達は蓮を除き飛羽真の元へ帰ってきた。『ゼンカイジャー』では人間キャストのキャラクター(ステイシー/ステイシーザー、ゾックス・ゴールドツイカー/ツーカイザー)が登場し、更に混沌を極めている(とは言え、真人間では無さそうだけど)。『セイバー』は着実に仲間達からの信頼を取り戻している中、『ゼンカイジャー』は一向に「人間同士の繋がり」を描きそうな気配は無い。新型ウイルスの収束が絶望的となっている今の世の中に、この2作品はどんな結末を提示してくれるのか、刮目せよ!(←急に『キュウレンジャー』)(急(キュウ)だけにね!!!)(はいっ、アルトじゃ(略))

 

▼2021.06.22. 追記

 『セイバー』と『ゼンカイジャー』の世界観は似ている。どちらも「今住んでいる世界が別の世界に変わってしまう」と云う部分で共通しているのだ。ここで神山飛羽真役・内藤秀一郎の『セイバー』製作発表時のコメントを見てみよう。

内藤「この『仮面ライダーセイバー』の内容をちょっと話すと、異世界に飛ばされて、今まであった生活が、当たり前にあった生活が出来なくなってしまって。それって今の世界とちょっと似ているような気がしていて。なので、『仮面ライダーセイバー』を観て、観ている皆さんが元気だったり希望を持って貰えるような、そんな作品にしていきたいなって思っております。」

▲『仮面ライダーセイバー』製作発表より、内藤秀一郎のコメント(原文ママ)

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 成程。ワンダーワールドに変化させられてしまった現実世界と、我々の未曾有のウイルスに脅かされている世界はリンクする、と。因みに、飛羽真と賢人の友人であり、平成吸い込みゲート…元い、謎の本の中に吸い込まれた少女・ルナは「コロナ禍で気軽に会えなくなってしまった友達」のメタファーらしく、それはチーフP、高橋一浩が公言している。それはさておき、『セイバー』も『ゼンカイジャー』も「今の世界が別の世界になってしまう」と言う題材を扱う事になった最たる理由は「コロナ禍による影響でロケ地が絞られてしまったから」である。

──ファンタジーといいながらSF的な飛躍もありますね。今回は、その異世界のビジュアルも、映像上かなりのボリュームで描かれているわけですが、そこは意図した結果なのでしょうか?

高橋 いや、最初はあの分量にはならない予定だったんですよ。それが今の設定になったのは、まさに新型コロナの影響です。街で人を助ける、街で事件が起きる、そういう今まで通りのロケができなくなってしまったので。人が多くいる場所の撮影も難しいし、遠方へのロケも、県を跨いでということになってしまうので制限がある。そのあたりを見越して「だったら異世界で戦うロケーション」をベースにしよう! と。街がまるごと異世界に飛ばされてしまうことにすれば、最低限のご近所のロケでもいけるんじゃないと。最悪ロケがすべてできなくなっても、CGで作っているワンダーワールドがある。まあ、予算とスケジュールによりますが(笑)、ロケ無しでCG空間の中で戦える。そういうところまで想定して今の状況になっています。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME62』より、高橋一浩のインタビュー。

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──現在、『仮面ライダーセイバー』では、ゲームエンジンを使ったCG合成のビジュアルをだいぶ使った見せ方をされていると思うんですが、本作では何かビジュアル面での構想はお持ちなんでしょうか?

中澤 見せ方については、コロナ禍ということが大きな影響としてありますね。映像の表現的に言えば、撮影できるロケ地の問題だとか、使える人数の問題だとか、以前に比べて自由度が下がってはきてるんですよ。でも、スーパー戦隊というのは「何でもありの世界観」を作っていけるシリーズなわけで。だからこそ、逆に今までと違うアプローチによってスーパー戦隊ならではの「何でもアリのワクワク感」を広げていけばなんとかなるんじゃないかという気持ちはありました。ロケが難しい今、『セイバー』が使ってる「ライブ合成」もそのひとつになると思います。『セイバー』では初めてということもあって、予算的にも技術的にも追いついてない部分がすごくあったんですが、そこら辺は『ゼンカイジャー』でもう一歩踏み込んでやらさせてもらってる感じですね。そのためには今回、より技術的ハードルを越える必要もあるんですが、さらに進化していけたらいいなと。まだ第一歩、二歩目くらいだと思うけど、これは東映撮影所にとってもひとつの突破口になるんじゃないかと思っています。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME63』より、中澤祥次郎のインタビュー。

 『セイバー』ではUnreal Engineと云う、本来はゲームを作る為のソフトを起用している。製作元は「Epic Games」で、これが使われているゲームは有名所だと『ドラゴンクエスト』シリーズや、同社製作の『フォートナイト』等。実は『仮面ライダー』シリーズのゲームでも使われている。アーケードゲーム『ナレルンダー!』だ(懐かしい!)。そして、この「Unreal Engine」は「お金と時間さえあればどんな仮想空間でも作れる」と云う超絶ヤバヤバソフトで、それは『セイバー』に登場するワンダーワールドを見れば良く分かる。とは言え、「お金と時間」は有限であり、最近はワンダーワールドでの戦闘は殆ど描かれていない(最近、クリムゾンセイバーがワンダーワールドでソロモンと戦っていたけど)。『ゼンカイジャー』はそれをもっとブラッシュアップし、「無理の無い範囲で出来る限り仮想世界を表現する」と云う試みを行っており、これは『セイバー』の序盤(3、4話、11、12話)を担当していた中澤監督だからこそ出来る所業だね。『ゼンカイジャー』の企画は『セイバー』ありきで動けている部分も大きいのだ。

 …と、まぁそんな話はどうでも良くて(!?)、製作陣の話を読む限り、内藤秀一郎の言う「異世界に飛ばされる世界観と現実世界のリンク」は余り意識はされていなさそうだけれど、双方コロナ渦を意識した作品である事には変わりないので、ここら辺の事情も物語内の結末、乃至は視聴者(子供達)へのメッセージに昇華出来ると…その…何だ、"美しい"な、と、自分は思います(ナニソレェ!?)。

 

 

ではこれにて。