レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

『仮面ライダーセイバー』は子供達に何を教えてくれるのか

▼ライダーは助けてくれない

──冬映画の『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』についてもうかがいたいんですが、あそこまでメタフィクションに振り切った内容というのはビックリしました。

白倉 『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』、あれがなかったらやれてないかもしれない。やっぱり前提があったから。ただ、あの映画はティガとダイナを(別の世界観の)ガイアと共存させるため、現実世界というギミックを用意していたわけですよね。冬映画はちょっと違うんですよ。もちろんライダーを集合させるためでもあるんですけど、2011年3月11日にあんたら何をしてたの?ってことを無視できなかったんです。これ、さっきの駆けつけ問題と一緒で、現実の世界が大変なことになったいたのに、オーズまでの仮面ライダーは何もしてくれなかったよねと。当時の子供たちは、テレビの向こうで偉そうな顔をしてるライダーに対して、どこかで冷めざるを得なかったんじゃないか?もしかしたら憎悪すら感じたかもしれない……。この問題にケリをつけなければ平成を語っちゃいけないと思ったんですね。平成ライダーは平成を名乗ってるわりに、平成という時代を背負ってないんですよ。(中略)仮面ライダーは実在しない、でも実在するんだ、というわかったようなわからないような結論にしなきゃいけないんだけど、なかなか答えが見えなかったんですよ。だって、ホントは実在しないんだもの(笑)。

▲『仮面ライダージオウ公式完全読本』より、白倉伸一郎のインタビュー。

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 どんなに大きい地震が起きても、どんなに強い津波が来ても、仮面ライダーは助けてくれない。だって、本当は実在しないのだから。

 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』のオチは「記憶の中にある限り、ライダーはいる」と言うモノ。つまりは、過去に白倉伸一郎がプロデュースした『仮面ライダー電王』の理屈(人の記憶こそが時間)である。

──"人の記憶こそが時間"という『電王』の設定が、今回も上手いこと機能していましたね。

白倉 ホント、『電王』には助けられましたね。結局、靖子にゃん理論で視聴者の記憶に残っているから仮面ライダーは実在すると押し通すしか答えはなかった。

▲『仮面ライダージオウ公式完全読本』より、白倉伸一郎のインタビュー。

 しかし、やはりライダーは人々の記憶の中までで留まってしまい、テレビの壁を飛び越え、現実世界に現れる事はない。今後何年、何れだけ仮面ライダーが増えようと、虚構の存在たる彼等は、現実の世の中を生きる我々を助けてくれる事は有り得ないのだ。

 だからこそ、我々自身の手で危機を乗り越えていくしかないf:id:kro12218116h:20200908184935j:image

 仮面ライダーセイバー』は謂わずもがな、このコロナ禍を意識して製作されている。

 『セイバー』には「ソードオブロゴス」と言う組織が存在し、それに属する仮面ライダー達は"聖剣に選ばれし剣士"であり、人知れず世界の均衡を守っている。仮面ライダーの組織…、凄く…戦隊です…!皆言ってるけど、『セイバー』は「スーパー戦隊っぽい」よね。その理由の一つが「ライダー組織(ソードオブロゴス)」なのだが、憶測だが、これは「助け合い」を描く為の設定だと思われる。

 スーパー戦隊」って、力を合わせて戦うヒーローと究極の形だよね。スーパー戦隊」の生みの親、故・吉川進と親交のあった評論家の切通理作は『週刊プレイボーイ 31&32号合併号』にて彼についてこう語っていた。…余談だけど、この『週刊プレイボーイ』の小宮有紗の爆破グラビア、その…バカじゃないの!?!?(撮影風景も爆笑してしまった…!)

 「吉川さんは絶対的なヒーローではなく、人間としての"弱さ"を知るヒーローを描きたかったんだと思います。それが吉川さんのどの作品にも通ずる大きなテーマでした。

 例えば『ゴレンジャー』ならば『5人そろって、ゴレンジャー!』と右掌を正面に掲げて名乗りを上げ、力を合わせて怪人を倒す。ヒーローひとりひとりは決して強いわけではありません。ヒーローに弱さがあるからこそ、ストーリーが一本調子にならず、今なおこのシリーズが続いているのだと思います」

▲『週刊プレイボーイ31&32号合併号』より切通理作のインタビュー。

 ライダー同士で組織を組んでいる、と言う設定は非常に珍しい。一応、『仮面ライダー響鬼』に於ける「猛士」があるが、あれは事務的な面が大きいので取り敢えず今回はノーカン。まだ「ソードオブロゴス」に関しては詳しい設定が明かされていないので何とも言えないが、所謂「ライダーは助け合いでしょ!」理論を持ってくるのであれば、それは、未曾有の驚異が蔓延る現代に於いて、凄く前向き且つ希望のあるメッセージに感じられる。こと、『仮面ライダー』作品に於いても、こう言った理想は幾度となく掲げられてきた。

 例えば、『劇場版仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』。震災直後のライダー映画である(まぁ、真の直後の映画は『レッツゴー仮面ライダー』だけど…!)。手掛けたのは『セイバー』でもメイン監督を勤めている柴崎貴行。
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ベル「何故…何故消えない…!」

映司「言ったよな、家族だけは戻れるって。」

ベル「まさか…!」

映司「そう、彼女達皆、一緒にいて助け合ってる家族だよ!」

ベル「…そんな綺麗事が通る訳は─」

映司「綺麗事じゃない!これは欲望を満たす質問だろ。俺の欲望は、これぐらいじゃなきゃ満たされない!」

(手を繋いでいく人々)

▲『劇場版仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』より。

 例えば、『仮面ライダービルド』28話「天才がタンクでやってくる」。余談、と言うか宣伝?だけど、以前、『ビルド』に関しての記事を一本投稿しているので其方も宜しければ。

kro12218116h.hatenablog.com

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戦兎「理想を掲げて何が悪い!ラブ&ピースがこの現実でどれだけ弱く脆い言葉かなんて分かっている。それでも謳うんだ。愛と平和は俺が齎すものじゃない。一人一人がその思いを胸に生きていける世界を創る…。その為に俺は戦う!」 

▲『仮面ライダービルド』28話「天才がタンクでやってくる」より。

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「さっきから五代さんの言ってる事、綺麗事ばっかりやんか!」

「そうだよ。でも、だからこそ現実にしたいじゃない!本当は、綺麗事が良いんだもん!」

 『仮面ライダークウガ』41話に於ける、今も尚名場面と名高い遣り取りである。しかし、「綺麗事が良い」のはそうなのだが、『ビルド』でも言う通り、「平和」なんて言葉は脆く弱い言葉であり、今の時代では『オーズ』のように手を繋ぐ事も出来ない。何れだけ理想を掲げても、結局は「綺麗事」で終わってしまうのが現実である。

▼人は助け合えない

紘汰「何で、何でそんな大切な事隠すんだ?」

貴虎「知らせた結果引き起こされるパニックが想像出来んのか!? 人々は自分の身を守る為だけに暴徒と化す。ヘルヘイムに侵略されるまでもなく、文明は崩壊する…。」

─────

凌馬「例え破滅の危機に瀕しても、互いに憎み合い、争う事を止められない。それが人間というものだ。戦争、宗教、民族の違い。抱えている問題を全て棚上げにしてヘルヘイムの脅威に立ち向かうなど、不可能な話だと思わないか?」

戒斗「そうかもな。俺もそんな奴らばかりを見てきた。」

─────

貴虎「だからユグドラシルが全てを担う。世界を救う責任を、誰よりも公平に果たせるのは我々だけだ。」

紘汰「…可笑しいだろ。こんな時程人間って一つになるんじゃないのか? 皆滅びるって分かったら、お互いに争ってる場合じゃないだろ!?」

貴虎「熟お前は、人の悪性という物を知らんようだな。ユグドラシルの研究成果を手に入れる為なら、各国はどんな強硬な手段でも取るだろう。ヘルヘイムに対処する手段を独占すれば、最早世界を手に入れたに等しい」

紘汰「…誰も、信じられないって言うのかよ!?」

貴虎「一人の悪意は、百人の善意を打ち砕く力を持つ。そうやって人の歴史は、幾度となく血に染まってきた。

(中略)

紘汰「他の人間は何も知らないままでいろってのか!?」

鷹虎「お前の家族や友人達の事を考えてみろ。例え事実を知った所で、何も出来ない無力な人々は、只絶望に怯えながら、破滅の時を待つしかない。彼等の平穏な日々を奪うのが、お前の考える正義なのか?」

紘汰「そんな…。」

鷹虎「侵略の恐怖に立ち向かう役目は、立ち向かう力を備えた者達だけが担えば良い。それでこそ平和が保たれる。」

▲『仮面ライダー鎧武』20話「世界のおわり、はじまる侵略」より。

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 紘汰の言う事は綺麗事である。事実、紘汰は人類救済計画(と言う名の、人類60億人抹殺計画)・プロジェクトアークに代わる救済方法を暫く見出だせず、最後にヘルヘイムからの驚異を救ったのは、駆紋戒斗/仮面ライダーバロンとの激闘の末、葛葉紘汰/仮面ライダー鎧武が手にした"知恵の実"による全知全能の力である。ヘルヘイムの森の侵略と言う無先例の大災害に、人類が勝利する事は無かったのだ。"天災"を敵に捉えた『鎧武』を引き合いに出したが、『鎧武』の世界の驚異(ヘルヘイムの侵略)と今のご時世(コロナ禍)って何だか似てるよね。『鎧武』の恐怖がこんなに身近になってしまうなんて。…て言うか『鎧武』、新作出るの!?このタイミングで何で!!?!?(嬉しいけど!!!)

虚淵 今、子どもたちはいったい何が怖いだろうと考えて、天災ではないかという答えに辿り着きました。津波地震といった自然災害。誰が悪いわけでなく、ただ形のない悪意が浸食してくる。意思もなく人間の存在を脅かしてくる存在。それが外来種としてのヘルヘイムの森であり、インベスです。

▲『仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』より、虚淵玄のインタビュー。

▼理想のその先へ

 「人々が手を取り助け合う」事は現代に於いての理想である。

 しかし、これは綺麗事であり、最早不可能に等しい。
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 『仮面ライダーセイバー』には是等を一歩越えた"希望"を提示して戴きたい。

 これが、自分が『仮面ライダーセイバー』に期待したい点である。勿論、「皆で助け合えば何でも乗り越えられる!」と、普遍的な帰結でも全然良いんだけど、それはやっぱり凄く有り触れた結論なので、これを一歩前進させた結論を提示する事が出来れば、それは"令和"なのかな、と、自分は思うのです。f:id:kro12218116h:20200910194034j:image

 そう言えば、話全然逸れるんだけど、「DX聖剣ソードライバー」を買ったんですよ。遊んだんですよ。目茶苦茶遊べるなコレ!!!!現時点で発売されてるアイテム(ソードライバー必冊ホルダー、ピーターファンタジスタブック等)は全て買ったのだけれど、まだ全然アイテムが揃ってない今の段階で凄く色んな遊びが出来るベルトになってる。個人的に近年の変身ベルトの中でも上位に食い込む出来かもしれない。前年の「DX飛電ゼロワンドライバー」は遊び辛かったよね…!正式な段階を踏まないと変身出来ないし、プログライズキーめっちゃ入れ辛いし…!ソードライバーは遊び易い上、プレイバリューも非常に高い。これは子供達も喜ぶんじゃない?とても完成度の高いベルトでした。気になってる方は是非お手に取ってみて。

 と言う訳で、取り敢えず、この記事が『セイバー』1、2話感想と言う事で。本編については全然触れてないけど!「子供番組だからこそ、子供騙しではなく本物を見せる」とはTTFC(東映特撮ファンクラブ)にて配信されている『Lウラ仮面ライダー』にて『セイバー』メイン監督、柴崎貴行が発した言葉。『セイバー』製作陣の掲げる"本物"とは何か、一年間、見届けて行こうじゃありませんか!これから宜しくお願いします。『仮面ライダーセイバー』。

 

ではこれにて。