レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

『仮面ライダービルド』6話「怒りのムーンサルト」感想+考察

▼ゾクゾクビルドアップキャンペーン

 今回のテーマは、「ベストマッチ」だ。…もう一度言おう。「ベストマッチ」だ。
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  仮面ライダービルドと言えば「ビルドアップ」。2つのボトルを組み合わせる事で多彩なフォームチェンジを可能とするビルドには、愛称の良いボトル同士が組み合わせる事で実現する「ベストマッチフォーム」とそうでないボトル同士で変身する「トライアルフォーム」と、二種類の形態が存在する。何気に、ベストマッチのフォーム名(ラビットタンクを除く)は造語になっているのに皆さんはお気付きだろうか?

・ゴリラ+ダイヤモンド=ゴリラダイヤモンドフォーム←🙅 ゴリラモンドフォーム←🙆

・タカ+ガトリング=タカガトリングフォーム←🙅 ホークガトリングフォーム←🙆

・ニンジャ+コミック=ニンジャコミックフォーム←🙅 ニンニンコミックフォーム←🙆

・パンダ+ロケット=パンダロケットフォーム←🙅 ロケットパンダフォーム←🙆
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 次回も新たなるベストマッチフォームが登場するね。ビルドアップのルールと言うか、組み合わせのポイントは有機物+無機物で組み合わせる事。忍者を「有機物」と言う括りにするのは如何な物かとは思うがね…!(前回でも「海賊(カイゾク)」なるボトルが出てきてたし……)そう、「動物」でも「乗り物」でもなく、「有機物」「無機物」と言う括りはフォームチェンジの可能性に幅を広げる事が出来る(自由度が増す)のだ。

大森 (中略)そもそも僕が最初に関わり始めた『響鬼』や『電王』『キバ』あたりは、そういう作り方(ドラマをベースにした作り方)ができてた時代なので、今関わってるスタッフの中にその時代を知ってる人はそんなにいないから、そういう作り方を目指そうかなということで今回は臨んだつもりです。で、最初にまずデザインから進めないといけないので、今回のライダーのモチーフはなんだという話になり、「今回のモチーフは"仮面ライダー"です」とずっと言い続けて(笑)。

──つまり「ゲーム」とか「医者」みたいなモチーフは、今回はないと。

大森 とにかく「モチーフはないんです」という言い方をした結果、今のような形になりました。具体的にはフルボトルというアイテムを組み合わせて変身するわけですが、要は何かと何かの掛け合わせ……そこは無機物×有機物というざっくりした立て方はあるんですが、そんなにモチーフに限定したつもりはないので、ドラマ的にはどう転がろうがアクションの部分においてちゃんと機能するギミックというか、逆に言うとドラマには余ります影響を及ぼさないようなギミックに留めたつもりです。なので、最初に脚本家さんと話したときも、そこまでギミック的なことは気にせずスタートしたというやり方ですね、今回は。

▲『東映ヒーローMAX volume56 2017 AUTUMN』より、大森敬仁のインタビュー。

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 只、問題なのは、あまりにも括りが自由過ぎる事で、「ベストマッチ」と言う概念にあまり必然(必要)性を感じない事である。
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 「鋼のムーンサルト」、「輝きのデストロイヤー」、「天空の暴れん坊」、「忍びのエンターティナー」、視聴者が「何これ!?」となる有り得ない組み合わせをビルドアップ(ベストマッチ)のウリにしているのだが、「ベストマッチだとトライアルフォームとどう違うの?」と言う疑問を持つ視聴者は一定数いると思われる。抑、劇中でもベストマッチについてはこれしか説明されてないしね。

惣一「ボトルには相性があるんだ。例えば、ラビットとタンク。この二本を入れると、相性の良い組み合わせが見つかれば、こうして光る。全組ベストマッチになったらとんでもない事が起こるらしい。けど、これが中々揃わない。」

▲『ビルド』3話「正義のボーダーライン」より。

  「とんでもない事」とは何なのか、と言う話は置いといて、要は何が言いたいかと言うと、ベストマッチはあまり凄いモノに感じないのだ。

▼二本のメモリでベストマッチ!

──『W』の魅力のひとつとして、3×3+αの各種フォームの厳密な使い分けがあったと思います。

三条 Wの場合、色が違うだけで形は同じじゃないですか。ちゃんと戦法とか能力の描き分けをしないと、6つのメモリの特性がよくわからないし、よくわからないイコール子供が欲しくならないということなんです。で、わりと僕はそういうことを描き分けるのが好きなんですよ。そこは漫画原作者出身ですから。だって「週刊少年ジャンプ」のマンガなんてそこ以上におもしろいところなんてないじゃないですか!(笑)もちろん、それ以外の物語にも魅力はあるけど、敵とのバトル編になったら、この技をこう防いだみたいなことを描けてないと生き残れない。塚田さんからの要請もありましたし、『W』のシナリオではそういう部分もかなり細く書きました。(中略)後々になって宮崎(剛)さんから「今だから言えるけど、あそこで普段やらないことにトライしたから、『W』はヒットしたんだね」とおっしゃってもらえたんですよ。"いろいろ考えて作ってそうだなムード"って実際に試行錯誤したかどうかが直結している気がしますね。

▲『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀!』より、三条陸の談。

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 『W』が大衆受けした理由の1つに「綿密なギミック設定」がある。例えばサイクロンメモリの場合、「メタルメモリと組み合わせると、防御力は増すが、サイクロン側の特徴たるスピードを殺してしまう!」「トリガーメモリと組み合わせると、連射が可能になるが、弾の威力は弱くなる!」と、メモリの組み合わせによって長所と短所が同時に生まれてしまうフォームも存在するが、ジョーカーメモリと組み合わせれば、バランスもとれて、スピードにも特化するぞ!」と言うような相性の良い組み合わせのフォームも存在する。宛ら、サイクロンジョーカーは『ビルド』で言う、ベストマッチフォームのそれである。只、だからと言ってサイクロンメタルやサイクロントリガーに出番が無かったかと言われればそんな事も無く、Wは戦況によって9つのフォームを使い分けるのだ。だからこそ、ハーフチェンジにも必然性が生まれるし、理屈好きの視聴者にも刺さるのだ。

▼三枚のメダルでベストマッチ!

武部 平成ライダーは「いかに去年と違う作品に仕上げるか」というのが基本ではあるのですが、やはり『W』のガイアメモリやフォームチェンジはとても好評だったので、「そこは引き継がなきゃいけないんじゃない?」と考えました。でも、フォームチェンジの違いをうまく見せることって、すごく難しいんですよね。例えばフォームごとに違う武器を使っても、やっぱり戦い方のバリエーションには限界があるので。(中略)たしかにフォームチェンジって、どうしても強さがインフレ化していきますよね。だから制限をつけたりなどの工夫は考えました。そういうことでいえば、変身アイテムであるメダルを管理する、いわば銀行みたいな存在としてアンクが生まれたんです。オーズになる(火野)映司自身が選ぶんじゃなくて、アンクが考えて投げたメダルを使ってフォームチェンジして戦うという、そういう面でも制限を付けたかったんですね。

▲『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀!』より、武部直美のインタビュー。

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 オーズは三枚のコアメダルの力を駆使して戦う戦士である。メダルには様々な動物の能力が秘められているのだが、昆虫、猫科、鳥類といったような、ある特定の分類の三枚のメダルを組み合わせると、バラバラな組み合わせによって成り立つ「亜種」よりも協力なパワーを持つ「コンボ」が完成する。これも『ビルド』で言う「ベストマッチ」である。しかし、その強大さ故に、使用すると映司自身の体力が大きく失われ、気絶をしてしまう事も屡々。…まあそれは段々死に設定と化していくんだけど…!
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 つまり、『ビルド』のベストマッチには『W』のハーフチェンジや『OOO』のコンボのような弱点や戦略性が薄い(又は皆無)事で、必要性を感じ辛いのだ。実際、3話のナイトローグ戦でもベストマッチじゃあないハリネズミタンクフォームなんか使い出すし、4話のフライングスマッシュ戦ではこれまたベストマッチではないゴリラ掃除機フォームで普通に善戦したりする(後からゴリラモンドにビルドアップするけど)。加えて、前述の通り、「有機物」と「無機物」と言うジャンルは極めてアバウトである。三条陸が言っていた、「いろいろ考えて作ってそうだなムード」はぶっちゃけあまり感じない。2009年にハーフチェンジをやれば宮崎剛の言う「普段やらないこと」なのかも知れないのだが、2017年にビルドアップをやってももうそれは「普段やらないこと」ではないのである。
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 これらの事から、ビルドアップ(と、ベストマッチ)に意外性や凄みを全く感じる事が出来ないのはとても痛い点である。

 や、『ビルド』に「変わった要素」なんて抑余り無いんだけどさ。


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 やっぱさぁ…話は面白いんだけどさぁ…(展開早いけど!)、『ビルド』からはどうしても「作品に対する心意気」が感じられんのよなぁ…!(少なくとも大森Pからは)『エグゼイド』で自分の全てを出したならそれはそれで良いけど、だからって後続を疎かにするなよ…!(スタッフやキャストや視聴者に失礼だぞ!)今後の情報誌で彼の印象が変わらん事を祈って、今回は幕閉じとさせていただきます。

▼余談(スーツについて)
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 ビルドは、ラビットタンク以外のフォームは共用のベーススーツにそのフォームに対応した胸や腕等のパーツを着込む事でビルドアップを成し得ているらしく。色々言ったものの、『ビルド』は例年よりフォームチェンジ多いからそこは素直に楽しい。まだまだ沢山のベストマッチフォームが出てくるだろうし、多彩な亜種(?)も期待しましょうか。

 

ではこれにて。