レイジング野郎

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『仮面ライダーエグゼイド』最終話(45話)「終わりなきGAME」感想+考察+『エグゼイド』最終評

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 『仮面ライダーエグゼイド』、一年間、本当にありがとう。と言う訳で、当ブログでも最終評を書こうと思います。「総括」はその後の展開を見てから書きます。このブログに初めて迷い込んだ方に一つ、警告をしておきます。当記事は『仮面ライダーエグゼイド』の批判からスタートします。まあ、最終的には賞賛はしていますけどね。批判的な意見を見たくない、あと、長文は嫌い、と言う方は下に進んではいけません。それでも読む、と言う方は、ようこそ、レイジング野郎の『エグゼイド』最終評へ。それではどうぞ。

▼高橋一浩は性善説信者
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 『ゴースト』チーフP、高橋一浩は"性善説"の持ち主らしく、それは『ゴースト』を観ててもよく解る。確かに『ゴースト』って「悪い人」っていないよね。大天空寺サイドは勿論、眼魔(ジャベル、イゴール等)やアラン一家、アデルでさえ最後には改心する。『ゴースト』は、キャラクター全員が少なからず、そして必ず「善い心」持っている。

諸田 (中略)あと、作品全体について言うと、思ってたほど人が死ななかったですよね。これは、やっぱり高橋くんがそういう人だからなんじゃないかな。「ジャベルも死なないんだ?」と言ったら「殺せないでしょう」みたいな答え方をされたことがあって。結局、悪い人は誰もいない、ということなんですよ。アデルでも最後の最後は改心してるし、絶対的な悪はいない。それはそれで正しいと思うんです。人はそれぞれに想いがあるから、どんなに悪人に見えてもその人にとっては正しいのかもしれない。

▲『仮面ライダーゴースト 公式完全読本』より、『ゴースト』メイン監督、諸田敏のインタビュー

──そして、タケルとの落としどころがが気になるアデルですが、我に返って仲間になると思いきや、ガンマイザーに取り込まれてしまいました。

福田 融和の道がとれなくなってしまうわけです。死の肯定とまでは言いませんが、倒すことで解放させてあげるということですかね。

──今までは融和の道を選んできたタケルがこういう選択をすることに、また成長が感じられました。

福田 『ゴースト』に限らず、このシリーズ全体に通ずることですが、互いに正義があって戦っていますからね。結局、アデルは悪いヤツではあったんですけど、最終的には完全な悪ではない状態で倒されてほしいという思いがありました。何かのきっかけで悪に堕ちてしまうとか、人間誰しもそういう部分は持ってると思いますし。

▲『仮面ライダーゴースト 公式完全読本』より、『ゴースト』メインライター、福田卓郎のインタビュー。

Q10 ウルティマやパーフェクト・ガンマイザーに変身したことも含め、悪役を演じることについて。

A10 悪役にも悪役なりの正義があるんだなぁと思いました。当たり前だけど、アデルにとってはタケルたちが敵の役。そういう意味では、悪役を演じている意識はそこまでなかったのかもしれません。仮面ライダーたちを圧倒したときは、正直、少し気持ちよかったですが(笑)。演じていくにつれてパーフェクト・ガンマイザーへの愛着も湧いていき、今では誰よりもカッコいいと思っている自信があります!

仮面ライダーゴースト 公式完全読本』より、アデル役、真山明大のQ&A。

 アデルの父、アドニスもこんな事を言っていたね。

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アドニス「アデルは、私の思い描いた理想を実現させようとしているだけ。純粋なのだ。しかし、私に迷いが生じた。アデルはそれが許せなかったのであろう。全ては私のせいだ。」

▲『ゴースト』27話「決死!覚悟の潜入!」より

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 端から見れば悪行でも、それがその人にとっては正しい事なのかも知れない。正義の考え方は人それぞれだからね。「正しい」の有方に定型等無いのだ。

▼高橋悠也は性悪説信者
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 対して、高橋悠也は"性悪説"に測るスタンスらしく、それは大森Pが公言している。

篠宮 大森さん、今まで色んな脚本家の方とお仕事してきはったと思うんですが、どうですか、高橋さんの魅力と言うか、凄さみたいなんは…。

大森 高橋さんはよく性悪説の人間って言うのをよく自分で仰られていて、人間を悪い人として書いている所があって、そこが割と『仮面ライダー』に合っているのかな、と言うのはあって、それと、玩具が多い今の『仮面ライダー』で、それも話にまぶしながらも各キャラクターを上手く描きつつ、しかも速い。速いからこそ今まで全話書いて貰えて、速いからこそ我々にも考える時間を与えてくださってるので、一緒に『エグゼイド』を作っている感覚ですね。

『第二回 東映特撮ファンミーティング』より大森敬仁の談(原文ママ)

 それ故かは知らないが、『エグゼイド』に登場するキャラクター達は少なからず、そして必ず「悪い心」を持っている様に見られる。

・永夢の場合
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 何気に『エグゼイド』で一番まずいキャラクターって永夢じゃないか…?「永夢は医者向きの正確をしていない」と当ブログではよく評するが、

「自身の命を顧みない危険な強行突破」、「仲間に情が移り、患者の命を蔑ろにする行動」はまだ分かる。でもパラドの件は駄目だろ…!結局、最後まで永夢の命の価値観(見方)はよく分かりませんでしたね…!パラドや大我に「自分の命も大切にしろ!」とか言う癖に、自分だって自分の命は蔑ろにしてるし、まあそれだけなら過去のライダー作品にだっていたしまだ許せるけど、場合によっちゃあ他人の命だって見えなくなる時もしばしば。新黎斗(現・黎斗神)の扱いに関しては最早擁護出来ないです。圧倒的ダブルスタンダードドクター、それが宝生永夢と言うキャラクターになってしまったのだ。

・飛彩の場合
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 最近、解決したが、ついこの間まで飛彩はクロノスの右腕として檀正宗に協力していた。理由は「彼女を蘇らせる(もう一度会う)為」なのだが、その為とは言え、人類に被害を脅かすゲーム『仮面ライダークロニクル』を運営する檀正宗に手を貸したのだ。あんとき、飛彩が邪魔せずクロノスをリプロってればここまで面倒な事になってなかったし、大戦犯だよなぁ…!永夢には「私情に引き摺られるな!」なんて何度か言ってたけど、「おまいう」も良いとこである。

・大我の場合
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 光医者とか闇医者(光属性)なんて言われてるけど、大我は医師免許を剥奪されているにも関わらず、今もなお、廃病院でドクターを続けている。「免許が無い、ただそれだけの事だ…。」(by飛彩)「例え免許が無くても…俺は…ドクターでありたいんだ…!」(by大我)いや、免許は無きゃ駄目です。…なんて書いといてなんだけど、まあぶっちゃけ、大我に関しては半分こじつけです(笑)多分、五人ライダーの中で一番善い人(ないしまともなキャラクター)だよね、大我は。まあ、最終回でゲーム病専門医に任命されたけど。

・貴利矢の場合
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 貴利矢なりの考えがあっての行動ではあるものの、彼は嘘吐きである。結果として、彼はその嘘で永夢達を翻弄し、彼自身も信用を失っていく。嘘を吐く事は悪である。44話では消え行くポッピーに「嘘は程々にね」なんて言われてたけど。でもって最近の悪行と言えばやっぱり新黎斗大量殺人ですよ…!

仮面ライダーである前に、僕はドクターです」「命に優先順位なんてつけられない」
永夢らしいこのセリフを皆さんはどう受け取ったでしょうか? 大我がいうようにガシャットを奪うだけでは甘い。そう考える人もいるはずです。しかし、飛彩が言うようにドクターの仕事は人の命を奪うことではありません。毎回、素敵なセリフを書いてくださっている高橋さんですが、この話のキャラたちの価値観のぶつかり合いには作る側としても考えさせられてしまいました。

▲『仮面ライダーエグゼイド』東映公式ホームページ 24話「大志を抱いてgo together!」PRODUCTION NOTE!より

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 ドクターが人を殺してる!7、80回くらい殺してる!「こんな貴利矢は見たくなかった…!」「生きていた頃の貴利矢の方が良かった…!」なんて人もいたのではないか?まあこれは『エグゼイド』キャラクター全員に言える事なんだけど、新黎斗(黎斗神)の事もちゃんと「命」として扱ってあげてください。

・黎斗の場合
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 言 わ ず も が な で あ る 。

 このように、ゲンムは兎も角、メインライダー達は全員、「悪い心」を持っている。それが高橋悠也の意図的な筆なのか氏の筆の癖でそうなってしまってるのかは定かでは無いが、つまりこれはどう言うことかと言うと、

▼振り返らず行こう

 みたいな事である(JUSTICE並感)。上記の5人の悪点、これらは皆、今まであった事が別の事に塗り(摩り)替えられている事が多いのにお気付きだろうか?

永夢、、、命を大切に!→黎斗神?何それ美味しいの?

飛彩、、、私情は捨てろ!→俺は私情に従うけどな!

大我、、、免許を剥奪された!→まあまだドクター続けてるけどな!

貴利矢、、、「ドクターの仕事は人の命を奪うことではありません。」→新黎斗くたばれええええええええ!!!!!

 過去を塗り替え、現在(いま)を変える。これが『エグゼイド』と言う作品の中には余りにも多い。だからこそその数だけ「ツッコミ所」も増えていく。

 しかし、それでもなお、ファンからの指示は多い。何故なのか?それは、そのあらゆるツッコミ所を全て「ノリ」が吹き飛ばしているからだ。

▼相当EXCITEEXCITE


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  物語終盤の「おおっ!?」となるようなシーンを集めてみた。『エグゼイド』は監督の「ノリ」も良かったね。『エグゼイド』はそれまでの積み重ねを捨ててでも、視聴者が相当EXCITEする展開を優先させた。それも、どれもが否が応にも興奮出来る展開。しかし、それだけでは視聴者を楽しませる事は出来ない。何故、ここまで視聴者が『エグゼイド』を持ち上げられるのか、それは『エグゼイド』前半(1話~24話)までの物語の完成度が高かったからだろう。実際、この頃は文句言う奴なんて殆どいなかったしね。…「積み重ねを捨てた」と言う表現もちょっと違うのかな。「過去と言う土台を組み換えた」とでも言っておくか。
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 でも、これって地味に超凄い事だよね。前半は物語の出来で視聴者を楽しませ、後半は「ノリ」だけで視聴者を楽しませる。超力業なのにそれを通せているって言うんだから『エグゼイド』のパワーは計り知れない。…まあ視聴率は例年より下がってるんだけど…!この「数ある矛盾をノリで押し通す」と言うやり方は同年に公開された春映画『超スーパーヒーロー大戦』で白倉Pがやったことだね。もしかすると『エグゼイド』に放たれた「歴史改変ビーム」は大森P(と、高橋悠也)が白倉Pのそれを参考にして撃ったものなのかも知れない。

 余談だが、視聴者が盛り上がる展開の中に、「エグゼイドとパラドクスの共闘」のシーンを入れたが、パラドを演じる甲斐翔真は(恐らく)本意では無かったそう。

甲斐 別に命を落とすこと自体は構わないんだけど……。

岩永 やられ方?

甲斐 そう。味方にはなりたくない。あくまで悪役として終わりたいですね。そもそも人間じゃないし、根っからのクレイジーなヤツなので、改心とか絶対に無理。今後の狙いとしては永夢を倒すことじゃないかな。もし他に永夢を倒そうとする人がいたら容赦しないだろうね。

岩永 基本、永夢のことしか考えてないからね。

甲斐 そう。永夢ラブだから(笑)。

▲『東映ヒーローMAX volume55 2017 winter』より、岩永徹也、甲斐翔真の対談。

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妄想してた終盤「心が踊るなぁ…!永夢、遊ぼうぜぇ!」

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現実の終盤「こ"へ"ん"な"さ"ぁ"~い"…こ"へ"ん"な"さ"ぁ"~い"!!!!」

 現実とは非情である。

▼正解等無い。

 今回の記事は性善説性悪説の話題から入っているのを皆様はお忘れでは無いだろうか?ここからが本題です。

 高橋悠也理論「この世に良い人なんて一人もいない。」と言う考え方は当然、高橋悠也本人も「悪い人」と捉えられる事となる。

 高橋一浩理論「見た目は悪でもその人にとっては正しいのかも。」と言う考え方はその人なりの「正義」の尊重を表している。
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 歴史を変える行為は「悪」だが、それで人を笑顔に出来る、と言う思いが高橋悠也(と、大森P)の「正義」なら、それは「善」なのかも知れない。

なんて事を思ったりもしたレイジング野郎なのでした。…ていうかこの記事、今までの『エグゼイド』感想記事に書いてきた事の寄せ集めだな…!

▼なんて事を書いていたら…?

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 さて、『エグゼイド』のテレビシリーズはエンディングを迎えました。「命」というテーマを軸に構築されてきた物語について、もう語ることはありません。テーマについては既に、登場人物たちによって充分に語られ、ストーリーの中で想いをぶつけられたからです。エグゼイドは“仮面ライダーらしからぬ”という言葉がついて回るシリーズでした。ゲームという荒唐無稽なモチーフを表現した、そのユニークなビジュアルが引き出すイメージによるところが大きかったと思います。しかし、『エグゼイド』というシリーズは“仮面ライダーである”ことがオチであるシリーズで、そのため“仮面ライダーである”ことをひた隠しにしてきたシリーズであるとも言えます。

仮面ライダー」は“悪”とその出自を同じくします。『エグゼイド』の裏テーマは“善”と“悪”は表裏一体である、ということ。敵と思われていたパラドこそが、主人公・永夢に感染していたウイルスであり永夢の分身であること。パラドに感染しているからこそ仮面ライダーとして戦うことができるということがエグゼイドが仮面ライダーである証だったのです。永夢とパラドがお互いに心を通わせ、「命」の大切さを共有するというイベントは“悪”でも“善”になりえるかもしれないという可能性の表現でした。と、いうことは逆も然りで、“善”が“悪”に転がることもあるのかもしれません。“善”と“悪”の表裏一体感は、仮面ライダーというシリーズ独特のヒーロー像です。1年を終えた今、エグゼイドも仮面ライダーの一人として認めていただけたなら幸せです。

▲『仮面ライダーエグゼイド』東映公式ホームページ 最終回を終えて「ご視聴ありがとうございました」EPISODE GUIDE!より。

 そうだったの!?!?

 "善""悪"になる事もあれば、"悪""善"になる事もある。"善"と"悪"は表裏一体。『エグゼイド』と言う作品は、物語やスタッフの動きも含めて、一年間、それを伝えようとしていたのかも知れない(違う)。

 ▼どうせまた一つくらいVシネマが来るんだろうなぁ~…

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!?!?!?!?!?!?!?

 えっ!?なに!?三部作って!?!?その名も…
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 『アナザー・エンディング』…!まさかのトリロジーと来たもんだ…!それと、檀黎斗が諸悪の根元なのは誰も忘れてないと思うんですが…(笑)兎に角、まだまだ『エグゼイド』は終わらないね。て言うか、『鎧武』や『ドライブ』辺りまではあんなに盛り上がってたのに、今やVシネマの一つくらい「普通」になってるの、時代を感じるなぁ…!

 何はともあれ、色々言ってきたけど、ここまで走り続けた『エグゼイド』、お疲れ様。本当にありがとう。これからもよろしくお願いします。
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ではこれにて。