レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

桐生戦兎は「見返りを求めないヒーロー」だったか?

▼見返りを求めないヒーロー

最終的に、戦兎は番組がスタートした当初と同じく孤独なヒーローに戻りました。『ビルド』が一貫して描いてきたのは、見返りを期待しない正義。たとえ他人に手を差し伸べたとしても、それは誰にも知られることはないかもしれないし、むしろ自分を犠牲にしてしまう可能性だってある―――。

https://www.toei.co.jp/tv/build/story/1213314_2766.htmlより、大森敬仁の文責。

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 仮面ライダービルド』の筋は「見返りを求めない正義」らしい。

 それは、『ビルド』3話「正義のボーダーライン」にて、桐生戦兎にその台詞を言わせている。

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戦兎「なら一つだけ教えてやる。くしゃっとなるんだよ。誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって、くしゃっとなるんだよ。俺の顔。マスクの下で見えないけど。見返りを期待したら、それは正義とは言わねぇぞ。」

▲『仮面ライダービルド』3話「正義のボーダーライン」より。

 でも、別に戦兎って「見返りを求めないヒーロー」ではないよね。

 と言うのも、最終回で新世界が創成され、そこにいる全ての人間が旧世界の記憶を無くした事に対し、戦兎は間違いなく良い思いはしていなかったよね。…と言う話は過去の記事のコメント欄にて綴っているので参照されたし。

kro12218116h.hatenablog.com

──美空たちの記憶が戻る展開について。
犬飼 これはうれしかったですね。劇中での状況としては、また地球が危機に陥ってしまっているので、みんなが良い形で再会できたとは言えないんですけど……。

『ビルドNEW WOULD 仮面ライダークローズ パンフレット』より、犬飼貴丈のインタビュー。

 いきなりツッコミっぽい始まり方しちゃったけど、別にこれを自分は批判するつもりは毛頭無くて。寧ろ「これで良い」とすら思っているんですよね。

▼欲望と言う人間らしさ

──やっぱり欲望って、人間が生きてく上でものすごい根元的なものじゃないですか。でも、一般的にはわりとネガティブに捉えられがちだし、実際かなりの確率で美しくなかったりもするんですけど、欲望=生きる力、みたいのポジティブな定義は、当然最初からの狙いとしてあったわけですよね。
小林 ですね。もう1話か2話の段階で鴻上さんが「人間は産まれてすぐに『欲しい』と言って泣く」って言ってるんですけど、あれがすべての象徴のつもりでしたから。

▲『仮面ライダーオーズOOO公式読本』より、小林靖子のインタビュー。

 桐生戦兎は「作られたヒーロー」である。佐藤太郎の体に葛城巧の記憶が埋め込まれ、桐生戦兎と言う名前はエボルトによって名付けられた。そして、そのエボルトに戦兎は終始「駒」として自身の計画に利用され続けた。それでも、戦兎が「ヒーロー」足らしめる、又は、「人間」足らしめる事が出来たのは、他でもない戦兎自身が「正義」"望んだ"結果だと思うのです。

 例えば、「誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって、くしゃっとなるんだよ。」と言う戦兎の台詞があるが、その「くしゃっとなる」事それ自体、戦兎の見返りなんだよね。人々の幸せこそが戦兎の見返りなのだ。そして、誰かの力になる(誰かが幸せになる)事を望み続けた結果、戦兎は更なる見返りを得る事となる。"仲間"と言う見返りを。

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エボルト「…!体が動かない…!どうなってる…!?」

万丈「何やってんだよ戦兎!」

戦兎「万丈!?」

万丈「エボルトは俺が何とかする!お前は逃げろ!なぁ戦兎、今どんな顔してるか分かるか?くしゃっとしてんだよ、俺の顔。(中略)一度しか言わねぇぞ、誰が何と言おうと、お前は俺達のヒーローだ。だから、生きてくれ。」

エボルト「ふざけるなァァァ!!!万丈は完全に抑え込んだ。もう二度と現れない!」

戦兎「最悪だ…。お前のその顔、見たくなっちまったじゃねぇか…!

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戦兎「エボルト!確かにお前が俺を仮面ライダーにしたのかもしれない。でも、俺がこの力を正しい事に使ってこれたのは、掛け替えのない仲間がいたからだ!皆が桐生戦兎を、仮面ライダービルドを創ってくれたんだ!!愛と平和を胸に生きていける世界を創る。その為に、この力を使う!!」

▲『仮面ライダービルド』最終話「ビルドが創る明日」より。

 仲間達の戦兎に「生きて欲しい」と思うのもまた欲望である。戦兎が新世界に留まる事が出来たのも、そこで唯一自分の事を憶えている万丈と共に暮す事が出来たのも「欲望が欲望を生んだ」結果なのだ。

 また、戦兎に「生きて欲しい」と言う欲望は戦兎の戦う姿を一年間見届けてきた視聴者、又はキャスト、スタッフが抱いたものでもある。

──終盤は、それこそ戦兎が一人で背負
い込もうとしてる雰囲気を感じていたのですが、そのまま終わらなくてよかったです。
犬飼 僕もとにかく「戦兎には幸せになってほしい」と願っていましたから(笑)。決してハッピーエンドってわけではないけど、一人ぼっちになる結末じゃなくて本当に救われました。

▲『仮面ライダービルド公式完全読本』より、犬飼貴丈のインタビュー。

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 欲望とは人間の心根。戦兎が見返りを求め、与えられると言う事、それは、戦兎が人間であるという何よりの証拠なのだ。

 と言うか、実は大森Pもこんな事を言ってたりもする。

でも桐生戦兎は言っていました。「みんなが、桐生戦兎を、仮面ライダービルドを創ってくれたんだ」と。恐らく知っていたのだと思います。自分の行為が周囲の人を動かし、やがて自分自身に還ってくるということを。佐藤太郎の顔と葛城巧の脳を掛け合わせて誕生した桐生戦兎という人間は存在しません。それでも、私たちが見てきた桐生戦兎の行為、桐生戦兎の精神は紛れもなく本物であり、ずっと心に残り続けていくに違いありません。つまり、次は我々がだれかに手を差し伸べる番なのかもしれません。桐生戦兎がやってきたように……。

 P曰く、『ビルド』は「人間賛歌の物語」なのだと言う。

 番組が始まる前、取材などで「描きたいことは」と質問されて、「仮面ライダーらしいことを」と答えましたが、そこは描けたと思っています。戦兎は「俺がヒーローだ」と言いながら人を助けるのではなく、人知れず戦うヒーローでした。それは仮面ライダーらしさのひとつで、1年間を通して貫けたのではないかな、と。ただ、悪の宇宙人(エボルト)を人間が協力して倒すという図式は、仮面ライダーらしさとは少し離れているかもしれません。仮面ライダーの根本は、敵味方が同質の力で戦う同族争いですから。でもそれは、お子さんに理解しにくいテーマなんです。「敵がエボルトだと明確になって、わかりやすくなった」という声を聞いたので、子ども向け番組としては正解だった気がします。エボルトが人間の悪の部分を利用して楽しみ、「人間は愚か」だと突きつけてきて、主人公側が「いや違う、人間は素晴らしい」と言い返す。過去に担当した『仮面ライダードライブ』の『エグゼイド』は、人間は悪い部分をもっていて、それを正すのも人間であることを描きましたが、今回は"人間賛歌"にしたかったんです。

▲『仮面ライダービルド キャラクターブック№02 -BIRTH-』より、大森敬仁のインタビュー。

 「欲望がある限り、何かが変わり、生まれる。」戦兎の求める見返りを、戦兎を作り上げた人々もまた望む。「欲望」と言う「人間賛歌」が、桐生戦兎と言う「人間」が新世界を作り上げ、そこに留まらせた、と言う帰結は実に美しい、と、自分は思うのです。欲望は無限大だ!!

▼と言う事で

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 リハビリと生存報告の意味も込めて、今回の記事を書きましたが、如何でしたでしょうか?如何も何も無いんだけど…!「今さら何しに戻ってきやがった…!」って感じですよね…。中々ブログ開く事が出来なくて…!でも、今でもまだちょろちょろとこのブログを見てくれている人がいてくれて嬉しいです。ありがとうございます。今後とも宜しくお願い致します。


ではこれにて。