レイジング野郎

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『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』感想+考察

 観てきました。2DとMX4D、どちらも観てきた。4Dの方の感想はあれだな…。七羽さんの匂いがするよ…。初の4D映画だったので楽しかったです。じゃあそんな訳で、内容の方の感想といきますか。簡易感想だけど…。それではどうぞ。

▼『最後ノ審判』はヒーロー映画

 HH 映画についての観どころをお願いします。

白倉 テーマとしては悠と仁のその後であり、決着である、アマゾンズというシリーズの終着点である完結編ではあるんですが、1本の映画としてもアマゾンズ、仮面ライダーならばこういうものを描けるんだっていう可能性を突き詰めたつもりです。(中略)純粋にシリーズをご覧になってる方はもちろん、初めての『アマゾンズ』が映画の方にも非常に観やすく、目新しいものになってるはずなんです。なにせ、悠也さんのホンを靖子にゃん読んで言った感想が「アマゾンズでもヒーロー映画作れるんだ!」ですからね(笑)

▲『HYPER HOBBY ハイパーホビー vol.08』より、白倉伸一郎のインタビュー 

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 『アマゾンズ 最後ノ審判』は「ヒーロー映画」なのだと言う。

  そして、「アマゾンズでもヒーロー映画作れるんだ!」と言う感想を放った小林靖子は「ヒーロー映画(ヒーロー作品)」と言うものをこう定義付けている。

 『アマゾンズ』が独特なのは、いわゆる「ヒーロー作品」の図式では語れないところだと思うんです。本来なら、誰か「悪いやつ」が出てきて、「こいつは許せない」という方向へ進んでいくことになるんですけど、そっちへ行かないのが『アマゾンズ』。善と悪の話ではないんです。そこに『アマゾンズ』の難しさがあると個人的には思っているんですが、劇場版ではネオアルファという新しいライダーが出てきて、それを「倒すべき敵」として描くことを成立させている。『アマゾンズ』という題材でも、こういう作り方が出来るんだなと感心しましたね。

▲『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』パンフレットより、小林靖子のインタビュー

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 つまり、「ヒーローが悪いやつを倒す」と言うのが「ヒーロー作品」である、と。と言う事で、『最後ノ審判』には「悪者」と呼ばれる新キャラクターが登場する。それが、御堂英之助/仮面ライダーアマゾンネオアルファである。クワガライジャーによく似ているけど全くの別人なので間違えないようにしよう!豆知識だけど、御堂がアマゾンネオアルファに変身する時、左腕の腕輪を操作するけど、あの腕輪の元ネタはガガの腕輪らしい。え?そんなの誰でも気付くって?…うん、言いたかっただけです…!話を戻す。靖子にゃんの言う通り、「"善悪"がない」のが『アマゾンズ』の特徴なので、本作に「コレジャナイ感」を感じた人は恐らく上述のそれが理由だろう。…まぁ、高橋悠也が書いている時点でそりゃあそうなるに決まってるんだけどさ。白倉伸一郎もこう言ってたし。

――Season1、Season2を全話書かれた小林さんの世界を受け継ぎつつ、高橋さんならではの新しい『アマゾンズ』の物語を期待されたということでしょうか。


もちろんです。そうでないと、悠也さんにお願いする意味がありませんからね。

仮面ライダーの"原点"って一体何なんだ? - 白倉伸一郎Pが語る『アマゾンズ』 (4) 高橋悠也脚本の狙いは「悠と仁が一線を踏み越えるシチュエーション」 | マイナビニュースより、白倉伸一郎のインタビュー

 しかし、ここで疑問が生じてくる。それは、

▼御堂は「悪」なのか?

 と言う事。これに関しては高橋悠也もこう言っている。

高橋 悠というのはアマゾンを"守る"人。そして、仁というのはアマゾンを"殺す"人。そこに新しいライダーを登場させようとしたとき、それはどんな人間なんだ?アマゾンに対してどう取り組む人物なんだろう、と考えたんです。それで出てきたのがアマゾンを"活かす"人。僕から見た『アマゾンズ』の世界というのは、ヤバい倫理観の人たちの集まりなんですよ。そこで御堂というキャラクターは僕たち人類の中での常識を背負う人と位置づけました。劇中で御堂はヤバいことをやっているという扱いですが、よくよく考えてみると、それは僕たちにとって日常的なこと……いわゆる肉を育てて食べるという、人類が当たり前にしていることなので。そういった問題を背負うキャラクターとして設定しました。

──なるほど。ある意味、人類の代表でありながら「悪」としての属性が際立っているキャラクターなんですね。

高橋 そう見えるのであれば、そこはこちらのストーリーテリングの策に乗っているということかもしれないですね。

▲『仮面ライダーアマゾンズ公式完全読本』より、高橋悠也のインタビュー。

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 要するに、人類の「常識」を「悪」に捉えたキャラクターが御堂と。そして、靖子にゃんはそんな御堂を見て「悪」と認識したと。流石は性悪説信者の高橋悠也ですね!彼は『アマゾンズ』の世界を「善悪がない」のではなく、「人類そのものが悪」と捉えて書いた訳だね。そうなると、上に書いた「コレジャナイ感」「コレジャナクナイ」になってくる。高橋悠也の『アマゾンズ』への靖子にゃん達とはまた違う解釈が生んだ『最後ノ審判』は「コレジャナイ」ようで「コレジャナクナイ」。寧ろ正しいとすら言えるかも知れない。本質で悠と仁は一線を越えるのだけれど、高橋悠也はそう言う所も含めて「人間の本質は"悪"である」と言う事を書いたのかも知れないね。だって、人は「誰だって殺してる、何かを殺してる」のだから。

▼「人間様に立てつくんじゃない…!」

 御堂は悠によって自分のプロジェクト(アマゾン牧場)を台無しにされ、挙げ句には畜産したアマゾンを皆殺しにしようとする。御堂の「家畜ごときが人間様に立てつくんじゃない」と言う台詞は、過去に高橋悠也が執筆した『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』の八乙女紗衣子を匂わせるね。
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紗衣子「お前は、人間様の奴隷なのよ!仕事を与えてやるから大人しく従いなさい!」

▲『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーパラドクスwithポッピー』より。

  『エグゼイド』と『アマゾンズ』は似てる、って話は以前もした(「共存の可能性を破棄している点」ってところはもう忘れてくれ…!)。

 

 紗衣子はパラドに、「病原体」という言葉を投げつけます。人間の手で勝手に生み出され、「仮面ライダークロニクル」で一度は人間たちを消滅させたとはいえ悪意があったわけでもなく、今では人間と共存するようになったパラドからすると、衝撃的な言葉ですよね。けれど人間の立場になると、意味合いが180度変わります。実際、バグスターは人間の命を奪って生まれ、誰かが大切な人を喪っているわけですから。これもまた『パラドクスwithポッピー』で浮き彫りになる不条理のひとつです。

▲『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーパラドクスwithポッピー オフィシャルムック ~SELECT▶HEARTS~』より、高橋悠也のインタビュー

 バグスターもアマゾンも、人間からは忌み嫌われる存在である。それらを「"活かす"人」と言う点でも二人は似ているね。紗衣子先生が生き残って、御堂が死んだのは、「異種族を受け入れられたかどうか」だったのかも知れないね。余談だけど、「『パラポピ』は正直いらん!」って言う人多スギィ!!!なんでや…!悪くなかったやろ…!

 御堂と言うキャラクターの凄い所は、「鑑賞者に悠にも仁にも共感を得られさせた」と言う点である。どう言う事かと言うと、

石田 「シーズン1」「2」を通して、こういうわかりやすいステレオタイプの悪役がレギュラーではいなかったんですよね。サブのゲストではいたけど。だけど今回は、オメガにしろアルファにしろ、その両方を敵とみなす立ち位置で、お客さんも含めて誰が見ても悪役というキャラが出てきた。だから、中途半端なことは一切せず、誰がどう見ても憎たらしくなるような悪役にしたつもりです。こいつが倒されることでお客さんには溜飲を下げてもらわないといけないので、殺され方には特にこだわりましたね。とにかくむごたらしく殺してやろうと思って。「みんなの恨み辛みを込めて死んでくれ」と。そんな思いを込めて演出したつもりです。

▲『仮面ライダーアマゾンズ公式完全読本』より、石田秀範のインタビュー

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 これまでは視聴者は悠と仁、どちらか一方にしか共感出来なかったのに対し、『最後ノ審判』では双方共に「敵」とみなす「悪役」が登場した事で、鑑賞者は悠にも仁にも、どちらのキャラクターにも「共感」出来るようになっているのである。悠はアマゾンを勝手に作り勝手に殺す御堂が許せない。仁は御堂の所業が気に入らない。「悠(or仁)の気持ちは分かるけど、仁(or悠)の言ってる事は理解出来ない!」となっていた視聴者が、本作ではどちらにも感情移入出来る、と言うのは地味に凄い事だと思う。しかし、どちらにも感情移入出来てしまったからこそ、その後に待っている二人の最後の決戦が胸に響く。「悠(or仁)の言う事も分かるし、仁(or悠)の言う事も分かる!どっちが勝つのが正しいの!?」と言う思いを鑑賞者に植え付けた状態で迎える二人の決着を、皆様はどう感じたでしょうか。

▼と言う訳で感想

 と、ここまで書いてきたが、自分の本作の感想は…実はこの人が全部言ってくれている。以下は、黒崎武役の三浦孝太のインタビューより。

 劇場版はとてもストレートなメッセージが込められてると思いました。人間とは何なのか、生きるとはどういうことなのか……。映像として過激な描写は確かに多いですけど、僕個人としては、大人の方だけでなく、子どもたちにも観てほしい作品だなと。きっと、この作品のメッセージは、しっかり届くと思うので。

▲『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』パンフレットより、三浦孝太のインタビュー

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 もやし「黒崎…、俺もそう思う。」

 抑、『season2』は兎も角、『season1』は「子供でも観れる」内容なんですよ!これはメインライターの靖子にゃん自身がそう言ってるし、

作家、辻村深月(代表作:『ツナグ』『かがみの狐城』等)も息子と一緒に『アマゾンズ』を観ていたのだと言う。『season2』は観せてないみたいだけど(笑)。

辻村 最近も息子と一緒に『仮面ライダービルド』(17年~放送中)を観ています。小林さんがお書きになった『仮面ライダーアマゾンズ』シリーズも大好きです。最初は、こちらも息子と一緒に観ていたんですけど……。

小林 えっ、あれをですか?(笑)

辻村 シーズン2の第1話で、これはもう少し大きくなってから見せたほうがいいな、と思い、隠れて親だけで観るように(笑)。それからは、最新エピソードの配信が始まる日は息子を早く寝かせて、午前0時が来るのを待っていたんです。

▲『小説BOC 9』より、辻村深月小林靖子の対談

 映画館、子供もチラホラいたな。「『仮面ライダー』である以上、子供の目は絶対に避けられない」とは前にも言ったが、そんな子供達にも、『最後ノ審判』のメッセージが伝わっていますように。

 

ではこれにて。