レイジング野郎

特撮多めの不定期ブログ たま~に関係無いことも

『仮面ライダービルド』21話「ハザードは止まらない」感想+考察

▼視聴者って所詮そんなものか
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 これは白倉伸一郎が自身のトークイベント『白倉伸一郎プロデュース作品を振り返る』にて発した言葉である。概要はこうだ。『555』の劇場版『パラダイス・ロスト』の先行試写会の時、乾巧がウルフオルフェノクに変身したシーンを観た観客がどよめいたと言う。これは乾巧がオルフェノクであると言う事実を観客はどう捉えれば良いのか(嬉しがるも違う、悲しがるも違う)と言う変な衝動に駆られたからだろう。しかし、よく思い出して欲しい。仮面ライダーファイズに変身出来るのがオルフェノクだけだったり、1話でオルフェノクを目の当たりにしても何も驚かないし、啓太郎が巧に近付くとくしゃみをしたりと、あまりにも「バレバレ」なシーンが多数に存在した。存在したのに、いざ巧がオルフェノクに変身すると、まるで「全く予想してしていなかった!」と言う反応を起こす観客達。これを見た白倉伸一郎「良くも悪くもお客さんって分かってくれないんだ」と感じたのだと言う。

 何故、観客(乃至『555』視聴者)は乾巧=ウルフオルフェノクと言う事に気付けなかったのか?それは当時のライダーファンの中で「ライダー=怪人ではない」と言う固定観念があったからに他ならない。仮面ライダーは怪人を倒すヒーロー!変身者が怪人な訳が無い!」と言うのが思っていなくても「そういう風」に視聴者の頭の中に刻まれてしまっていたが故に、『パラロス』のあのシーンは大半が驚いたのだろう。

 因みに、乾巧を演じた半田健人は「巧がオルフェノク」と言う事には最初から気付いていたらしい。最も、半田健人は特撮ヒーローものを全く観ないで育った男であるのだが。もしかすると、ライダーをよく知らない「一般人」程、この展開には気付けたのかも知れない。

半田 これはよく話してますけど、僕は1話の台本をもらった時点で、巧って実はオルフェノクなんじゃないかって気づいてたんですよね。まずちらっと思ったのは、オルフェノクが目の前に出てきたときに、動揺しなさすぎでしょっていうね(笑)。

 もともと彼にファイズっていう特別な力があるなら別ですけど、あんな得たいの知れない、この世のものとは思えない怪物が現れたときに、パンツが入ったバッグを気にしていられる余裕は、よほどのバカか、やっぱり自分がそうなんじゃないかって。

 だから、映画で巧がオルフェノクになるって台本を読んだときも「だよね」って思いましたね。

▲『永遠の平成仮面ライダーシリーズ 語ろう!555・剣・響鬼』より、半田健人のインタビュー

▼でも、今はそうじゃない。

 しかし、この2018年現在ではそうはいかない。と言うのも、「主人公が異形の者」と言う事象は、もうこの現代には珍しくないからだ。

──(中略)まず、序盤から謎の開示が早いなと言う印象がありまして。戦兎自身の謎や龍我に絡んだこともなんですが、マスターの正体があそこまでガッツリと描かれたのは予想外でした。

大森 全部そのあたりは最初に武藤さんが構築してくださったストーリーラインなんですが、去年の『エグゼイド』と比べてもさらにどんどん謎を明かすのが早くなっていて、それは我々もいいことだと思っています。というのも、もう謎だけで話を引っ張っていく作り方って、ちょっとしんどいんですよ。これは『エグゼイド』のときに高橋(悠也)さんとお話したんですが、今はネットの時代ですから、謎を仕込むとそれを解きたがる人が次々に現れて絶対にバレちゃうんです(笑)。そんな状態で話を続けていくのって、恥ずかしいじゃないですか。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME57 2018 WINTER』より、大森敬仁のインタビュー

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 大森作品を例に上げると、嘗ては仮面ライダードライブ/泊進ノ介はロイミュードなのではないか?」と言う予想がネット上に飛び回った事があった。結局、その予想は「はずれ」ではあったのだが、確かに、今の時代は有る事無い事様々な考察がネット中に広がる。どれだけ捻った謎を仕掛けても、大抵の場合は先に誰かしらに当てられてしまうのがオチだ。

 それでも『ビルド』は、「桐生戦兎=葛城巧」や、「ナイトローグ=氷室幻徳」、「ブラッドスターク=石動惣一」等々、「○○の正体は○○だったんだよ!」と言う予想があまりにも容易且つ正解してしまう。ネットが有ろうが無かろうが、これは誰もが分りきっていた展開だろう。
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 何故これ程までに考察が簡単なのか。それは、今が2018年だからであり、『ビルド』が平成仮面ライダー19作品目だからである。

▼だからバトルで勝負する

 「『ビルド』が最近面白くなってきた」と下の記事に書いた事がある。

 

──確かに、今はあっという間にネット上で"解析班"が立ち上がりますからね。かといって予想外の展開にこだわりすぎると、かなり不自然な話になるんじゃないかと。

大森 まったくその通りだと思いますよ。あまり無理な展開になるのも本末転倒ですから。武藤さんもそこは同じように考えられていて、「謎」と呼ばれる要素はほぼ年内ぐらいで回収しようという思いはあったみたいで、マスターの話と戦兎の正体に関わる龍我の冤罪はそこで解決してしまおうと。それで次の第2章は「バトル」でいくんだと明確におっしゃられてましたね。実際にはパンドラボックスや美空のことなど、多少の謎は残っていますが、以降は謎解きよりも「どっちが勝つんだこのバトル」と言う見せ方がいいんじゃないかということです。

▲『東映ヒーローMAX VOLUME57 2018 WINTER』より、大森敬仁のインタビュー

 好みの話になるんだけど、個人的にはそれで正解だったと思っている。謎では「感動」は出来ないからだ。第2章は「ビルド&クローズVSグリスwith三羽烏とそのドラマに重きが置かれている為、第1章よりも自分は楽しめている。戦兎の正体は葛城だと予想出来ても、ビルドVSグリスはどんな結末を迎えるかは予想出来ないしね。
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 そして始まってしまった代表戦。果たして勝負の結果や如何に。

 

ではこれにて。