『仮面ライダーエグゼイド』20話「逆風からのtake off!」感想+考察
▼二話完結お悩み相談方式の撤廃
平成二期では長らく「二話完結お悩み相談方式」と呼ばれる手法が多用されていた。しかしそれは『鎧武』で一度止まり、その後の『ゴースト』、『エグゼイド』は「一話完結」と「二話完結」を使い分けている。
鎧武の場合、「二話完結」も「お悩み相談」も全て廃止することで登場キャラクターを絞り、常にメインキャラクターに焦点を当てられる上(掘り下げが上手くいっていたかどうかは置いといて)、本筋の話をガッツリ全編通して続けられる構成となっていた。ある意味これって平成二期ライダー作品にとっては一種の"革命"で、これが一年間続けられる事が出来たという実積が少なからず『ゴースト』や『エグゼイド』に影響を及ぼしている。
『エグゼイド』(と『ゴースト』)は「二話完結」だけを取り除いた事で一つの話ごとにゲストが登場する。『エグゼイド』は病院を舞台にしている為、ゲストは患者として登場する訳だがこの作品の凄いところは『鎧武』では、ゲストの廃止によって本筋の進行とキャラクターの掘り下げに重きを置いたのに対し、『エグゼイド』ではメインキャラの事情と患者の事情を重ね合わせる事でキャラクターの掘り下げを成功させているという点だ。この手法の良いところは、メインキャラへの感情移入がより安易になる上、一、二話しか登場しない単発ゲストも視聴者の印象に残るという所。他作品のゲストと比べて『エグゼイド』の患者達の方が鮮明に記憶が残っている視聴者も多いのではないか。幾つか事例を挙げてみよう。
・例えば、6話(患者:堀内曜子)
グラファイトに二つのゲーム(ゲキトツロボッツ、ドレミファビート)のウイルスを感染させられた患者、堀内曜子には窪山誠一という彼氏がいた。堀内曜子は永夢に自分がゲーム病だと言うことは誰にも教えないでくれと言う。
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堀内 「先生、御願いします。ゲーム病の事は誰にも言わないでください。彼に負担を掛けたくないんです。」
明日那「もしかして恋人の…?」
堀内 「同じ大学に通ってる窪山誠一って人です。彼、夢だった楽団に入る為に何度もオーディションを受けてるんですけど、中々結果が出せなくて…。」
永夢 「彼の事が心配なんですね…。」
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これは同じ回で明かされた飛彩の過去と似ている。飛彩の彼女、早姫もまた、ゲーム病で苦しんでいる事を彼氏である飛彩には報告しなかった。それは、ドクターを目指し勉強に励む彼を邪魔したくなかったから。
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明日那「早姫ちゃん!早姫ちゃん!」
飛彩 「早姫!どうして黙ってたんだ!」
灰馬 「飛彩!止すんだ!」
早姫 「飛彩…。」
飛彩 「感染症で苦しんでいたなんて、俺は一言も聞かされてなかった!どうしてだ!」
早姫 「飛彩、世界で…一番の…ドクターになって…。」
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・例えば、7話(患者:岡田誉士夫)
患者、岡田誉士雄は見舞いに来た娘、しおりに「帰れ」を告げた事から二人は言い合いになってしまい、それを永夢は止めようとする。岡田はゲーム病故にストレスを与えてはならないと。
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岡田 「何だ…まだいたのか…。お前はもう帰れ。」
しおり「何それ…ずっと家の仕事手伝ってきた人にそういう言い方する!?」
岡田 「あぁ、するよ。お前がここにいたって、何の役にも立たねえんだ。」
永夢 「落ち着いてください。ストレスを溜めると危険です。岡田さんはゲーム病なんです。」
二人 「ゲーム病?」
永夢 「はい、命に関わる危険な病気です。」
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それを見ていた貴利矢は永夢の胸ぐらを掴み、病気の申告には注意しろと叱責する。何故なら、貴利矢は過去にその注意不足のせいで友人である藍原淳吾を亡くしたから。
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貴利矢「馬鹿正直もここまで来ると呆れるな。ドクターなら、病気の告知には細心の注意を払えよ。」
永夢 「えっ…?」
貴利矢「真実を伝える事が正しいとは限らない。真実が人の人生を狂わせる事だってあるんだよ!」
永夢 「貴利矢さん…。」
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・例えば、12話(患者:山中周平)
患者、山中周平は木登りをした際、その木から落ちて足を骨折してしまっていた。木登りをしていた理由はケーキ屋を営む母、美奈子(と父親)を喜ばせる為に手作りのリースをプレゼントする為の材料集めが原因。クリスマスの時期のケーキ屋は大忙しの為、周平は毎年、両親と過ごす事が出来なかったのだ。永夢は周平のその事情とを照らし合わせ、自身の過去を語り始める。
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永夢「周平君。体の具合はどうかな?実は先生ね、君ぐらいの歳の頃、夜は家に一人でいることが多かったんだ。大好きなゲームをやったり、今までにないゲームのアイデアを考えたりして一人で過ごすことに慣れてた。周平君にとって、それは木登りだったんでしょ?実は先生、登ってみたんだ。あの木に。」
周平「先生…。」
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今回の患者は江上大介。彼には好きな女性がおり、近々、その娘と二人で遊園地に行く約束をしていた。しかし大介は絶叫マシンが苦手で、それを理由に彼女に嫌われてしまうのではないか、というのが彼のストレス。患者と共に恐怖を抱えているのが主人公(メインキャラ)である永夢だ。彼はもう一度変身すればまたもう一人の自分に体を乗っ取られるのではないかと恐れてしまい、中々一歩を踏み出せないでいた。
今回のテーマは「恐怖と向き合う」というもので、だから大介は絶叫マシンへの恐怖を克服する為に(半強制的に)ポッピーと永夢と一緒にジェットコースターや観覧車に挑むし、永夢はそれでもドクターだから、患者を救う為に、と変身への恐怖を乗り越え、マイティブラザーズXXガシャットに手を伸ばし、だーーーーい変身する。
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大我「エグゼイド、ビビってんならガシャット置いてここから立ち去れ。」
(黎斗)「もしまた発症したら2度と元には戻れないかもな。」
(飛彩)「患者の身体を治して、患者の笑顔を取り戻す。それがお前だろ!」
大我「一生自分の身だけ守って、一人で笑ってろ。」
永夢「そんなの嫌です…。」
大我「ん?」
永夢「僕は、ドクターですから!」
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PP「治ってる!」
永夢「無事で良かった。」
大介「ありがとうございます。あの…僕、頑張ります。絶叫マシン克服して、彼女に会いにいくから。」
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もう一人、「恐怖」と向き合った人物がいる。
そう、花家大我だ。お化け屋敷の事じゃないよ。「失うものは何もない」とか「プロトガシャットの副作用が~」とか言いつつもやっぱり少し怖かったと思うのよね。レベル50のガシャットを使うのは。前回の飛彩の様に苦しむのは。それでも「他の誰かが苦しむなら」と覚悟を決めて危険な地に足を踏み入れられるのが大我なのだ。この人は本当いい人だよなぁ…。
こうして様々なキャラクターが様々な恐怖を克服した回でした。大介君には頑張ってほしいね。
↑パワーワード過ぎたので貼りたかっただけ。
ではこれにて。